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2006年3月31日 (金)

IT企業が買収を続ける理由

投資ブログですから、最初のネタとして「IT企業が買収を続ける理由」について書いてみましょうか。

ここ数年は日本でもM&Aが活発化しておりますが、中でもいわゆる「IT企業」が派手に買収合戦を演じ、大きく成長してきました。ソフトバンク・楽天・ライブドア・USENなどが千億円単位の資金調達をして、大小さまざまな会社を飲み込んでいます。

中には「時価総額経営」なるスローガンを標榜し、時価総額を最大化することを経営目標とする会社もありました。ライブドアの堀江社長は捕まってしまいましたが、M&Aによって業績を伸ばしてゆく(成長を買う)というビジネスモデルは日本でも確立したように思います。

では、なぜ彼らは買収を繰り返すのでしょうか?

カネのため? 
名誉のため? 
自己実現のため?

それらはもちろんあるでしょう。しかしそれに加えるとしたら、「株価が割高だからしかたなく」という要素もあるかもしれません。簡単に言うと、自分の本業よりも大きな資金が会社に流れ込むと、本業以外のビジネスにも手を出さざるをえなくなるのです。

ちょっと想像してみてください。

あなたはあるIT企業の社長だったとします。あなたが狙っているビジネスは、その市場規模から見て100億円の資本が必要だと考えました。あなたは株式を公開し、首尾よく必要な100億円を手にしました。ところがそのビジネスモデルが市場に受け、社長であるあなたは人気者になり、会社の時価総額が1000億円に達しました。さて、ここであなたには2つの選択肢があります。

1. 株価は放っておいて、本業に専念する

この選択肢は厳しいです。なぜなら本業は100億円の資本しか必要としないので、たとえば益利回りを10%(=PER10倍)と考えるなら10億円の利益しか生まない市場ということになります。本業から逸脱しないのであれば利益はそこで頭打ちになります。現在の市場は利益の100倍(=益利回り1%=PER100倍)で評価していますが、いずれは適正な価格に落ち着くでしょう。つまり、株価は10分の1近くに下落するということです。

あなたは最初の計画通り、自分が狙ったビジネスを全うしただけです。それなのに投資家のほうが勝手に期待をして、株価を10倍に吊り上げてしまいました。そんなのがどうなろうと、本当は知ったこっちゃありません。しかし株価が10分の1に暴落すれば、投資家はあなたを非難するでしょう。そう、「期待に応えられない無能な経営者」のレッテルを貼られてしまうのです。そこであなたは考えます。

2. 実体のない株価を、実体のあるものにする

期待するのは投資家の勝手だが、それに応えないとえらいめにあいそうだ。やれやれ、上場がこんなに大変なものだとは思わなかったと。しかしボヤいてばかりでもしょうがないので、この割高な株価を何とか正当化できるような利益を上げようとします。

本業には100億円で十分です。放っておけば時価総額はそこに戻ってしまうでしょう。では、割高な値段で株を発行して(=10倍の値段で売って)、その資金で実体のある他の会社を買えばいいじゃないかと。

関係者には失礼に聞こえるかもしれませんが、割高な株価というのは「霞(かすみ)」のようなものです(by服部暢達先生)。つまり利益に対して、希薄化された状態にあります。いずれは消えてしまう霞でも、その前に何かと交換してしまえば完全には消えてなくなりません。そう、霞が消えてしまう前に、もっと実体のある水や氷と交換してしまおうというのが、企業買収のひとつの動機なのです。

こういった現象を考えるひとつのテクニックとして、「会社を投信に置き換えてみる」という方法があります。投信はアセット側(資産側)に他の会社のエクイティ(自己資本)が入っただけの会社ですから、構造としては会社と同じと考えることができます。「会社型投信」なんて言葉もあるぐらいですから。(参照 ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金篇

それを使ってこの現象を考えると、こう説明することができます。

あなたは超小型株の運用者で、100億円の資金を預かっていました。しかしあまりにもパフォーマンスが良かったので、顧客が資金をどんどん追加し、預かり資産が1000億円にまで増えてしまいました。ヘッジファンドのように資金に上限を設定して断ることができるのであれば、100億円の小さなファンドのままでいてパフォーマンスを落とすこともないでしょう。しかし断ることができないまま資金が集まってしまったので、慣れない中大型株にも手を出さざるをえなくなってしまいました。さて、何を買えばよいものやら???

このように、超割高な評価をされたIT企業は、市場に存在する投資機会に比べてあまりにも資金が集まりすぎたファンドと同じ悩みを抱えることになります。本業以外の分野はやったこともないし、よく知らないので本当はやりたくない。しかし顧客の期待はそれを許さず、これまでと同じパフォーマンスを期待している。これはもう恐怖以外の何者でもありません。勝手に高いところに持ち上げられてしまうので、そこから落ちて大怪我しないようにするだけで精一杯なのです。

つまり、

「株価が割高な企業の経営者は、恐怖感にかられて買収に走ることがある」

ということです。

何に対する恐怖かと言えば、「株価」そして「経営者としての自分の評価」が暴落することに対する恐怖です。なんとか手を打たなければ引責辞任だとか、訴訟といったトラブルに発展する可能性があります。

もちろん株価が不当に安く放置されていて買収のターゲットにされるほうも怖いのですが、メチャクチャに高く評価された企業の経営者もそれとはまた違った恐怖を感じているはずです。それが時として、シナジーが疑問視される業種への参入や、周囲からは強引に見える買収へと経営者を駆り立てるのです。

(続く)

 

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コメント

 昔奈良県からチケットを申し込んだとメルマガでも紹介して頂いたものです(笑)

とりあえず、教えたくない~シリーズは全て読ませて頂きました。大変参考になりました。多謝。

中国の影響でこのバブル?は崩壊するんですかねぇ・・税金払いたくないんでとりあえず持ちっぱなしですが・・。なぜか資産が増えても実感がない今日この頃です。

また折を見てコメントさせていただきます。

tsさん

コメントありがとうございます。

私としては、中国バブルが崩壊しても世界の株式市場への影響は軽微と現状は考えています。なぜならグローバルに金融相場から業績相場に移っているからです。

怖いのは長期金利の上昇だけです。発展途上国の市場がいくつか飛んだところで、ほとんど影響はないでしょう。

ただし日本には「中国を助けてあげよう」と仏心を出して沈没してゆく人たちが昔から大勢いました。辛亥革命を助けた日本人たちも、感謝されたことはありません。大陸に深入りするといった過ちをしなければ、対岸の火事で終わると思います。

お恥ずかしいそれを教えちゃマズイだろ!シリーズでしたorz失礼致しました。

上記の中国がこけても世界の株式市場には
あまり影響が無いのではないかという
コメントですが、商品市場(銅、アルミニウム、
原油)あたりには結構影響があるのでは
ないかと思います。私の理解では今の
商品相場の高騰は中国の需要増大を
はやしている側面が大きいと思われるので。

まあ、きっかけは何でもいいので、
価格ががんがん上でも下でもいいので
動いていただきたいと思います。
(個人的にはライブドアショックは
株のいい仕込み場になってよかった)

隆太郎さん

ご指摘ありがとうございます。確かにそうだと思います。

コモディティ価格の上昇が100%外需であれば、単にそれがインドや東南アジアに移転するということですから怖くないのでしょう。
しかしおそらくそればかりではなくて、投機資金などがもてはやしている部分が強いと思われます。するとこれまでのような上昇は苦しくなるかもしれませんね。

これまでは経済効率の悪い大陸にリソースをむりやり無駄に突っ込んでも、人件費や地代の安さがそれらをカバーしていました。環境対策も必要ありませんでした。しかしその「うまみ」もなくなったのであれば、コモディティ価格の調整はありうると思います。

コメントどうもありがとうございます。

商品市況(特に金属)の長期低迷や商品の需要
そのものの減少が起きると、商品市況の高騰で
価格が上がったと思われるAUDも結構調整する
可能性が高いように思われます。

中国がこけたら商品や為替の一部は大きな
動きがあって面白いんじゃないでしょうか?

隆太郎さん

むっ、いきなり私のスイッチをオンにしてくれるご意見ですね。まったくその通りだと思います。資源国通貨はオーバーバリューされているので、調整を余儀なくされるでしょう。

しかし先進国の株式市場にとっては、むしろ
プラスだと思います。というのも97-98年にエマージングが飛んだことで労働コストが下がり、商品市況が軟化したことが、その後の企業収益を支える一員となりました。ボラティリティは上がっても、それに耐えられるだけの収益性を先進国のトップ企業は持っていると思いますよ。

そんなわけで、2010年ぐらいまでは株は大丈夫と思っているのです。

またまた、お返事ありがとうございます。

ある程度のインフレになっている経済で原材料
価格が下落すると企業収益にプラスだと思われ
ますが、今の日本みたいにデフレから脱出した
ばっかりのところで原材料価格がどかんと
下がるとまたデフレに戻ってしまってよくない
のではないでしょうか?

中国がこけても株に影響しないという見通しは、
日本がある程度のインフレ状態に戻ってから
という前提条件が付いていたりしますか?

隆太郎さん

なんか私が後で書こうと思っていたネタをどんどん引きずりだされているような感じですね。

まったくそのとおりで、エマージングのクラッシュはインフレ国に有利です。ですから日本以外の先進国はわりとホクホクです。そこに投資していた連中は痛むんですけど、破綻証券を専門とする人間がそれを拾いますし、全体として企業収益(フロー)は増えますので、その痛みを吸収しながら株が上昇しました。

日本の場合は少しインフレ率が下がっただけでもデフレになってしまうので、それほどおいしくはありません。ただし他のインフレ国の株式市場が上がることによって、おこぼれをもらうような感じでしょうか。

97-2000年の市場はそのようなイメージでした。日本ではいたるところでバランスシートが傷つき、塗炭の苦しみを味わいました。しかし一部の業種は好調な海外市場の恩恵を受け、たとえばITバブルなどが出現しました。

それと同じように、ここ数年は肝を冷やす場面が何度かあっても、ショックを吸収できるのではないかと考えています。

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