97年通貨危機の再来か?(1)
センセーショナルなタイトルですが、あまり期待しないで下さい(笑)。リクエストをもらっていたテーマについて、整理するだけですから。
nicolloさんからこのテーマについてリクエストをもらったときはNZDなどが安くなっており、「すわ、97年通貨危機の再来か?」ということでした。それ以降はどちらかといえばドル安が進み、総じてアジア通貨が高いようです。
それでこれからどうなるかですが、私としては「日米金利および通貨次第」と答えます。ただし97-98年のように世界的なcontagion(伝染)になるかと言えば、そこまでレバレッジが溜まっているとは思えません。個人的には中国や韓国の株価・通貨を尋常ではない興味を持って観察しておりますが、それはさておき、まずは基本的な動きをおさらいしましょう。
97-98年の通貨危機を引き起こした原因は、
- 新興国の小さな経済に大きなビジネス資金(主にドル建て)が流れ込んだ。株価と通貨の上昇を好感して投機的な資金も入ってきた。
- しかし時間が経つと、投資に見合った収益が上げられないことが明らかになった。クルーグマン教授風に言うと「インプットに見合ったアウトプットがあげられない」ということ。そういった現実に直面し、資本逃避が始まった。株価と通貨が同時に急落した。
- そのとき「円調達・外貨運用」いわゆるグローバルキャリートレードが一説には70兆円ほど行われていた。それが一気にアンワインド(巻き戻し)されたことから急激な円高がもたらされた。
- 多くの途上国はドル建ての借金をしていたため、自国通貨が(主に対ドルで)下落した後には債務の価値が上昇していた。そのためバランスシートが毀損し、投資と消費が落ち込んだ。資産が縮小して負債が膨らみ、債務超過になったということ。
ごく簡単に言うと、こういった経緯でした。
で、私は新興市場の株価や通貨を予測する時に何に注目するかというと、「米金利・ドル相場」「円金利・円相場」です。ユーロ圏通貨も注目しないことはないのですが、感覚があまりないので日米をよく見ています。簡単に言えば、「新興市場は、先進国の都合で大きく振り回される末端である」という理解ですね。
まず米金利や円金利が安いときは、そういったエマージングマーケットへの投資は盛んになります。ドルや円で調達して新興市場で運用すれば、ROEが高くなっておいしいんですよ。
それが続くと、今度は投機資金が入ってきます。すると新興市場の株価と通貨が同時に上がり、いわゆるダブルプレイでウハウハ儲かります。そうなると証券会社や新聞社が喜んで、新興市場ブームを作ります。カモになりやすい投資家が参入するのはこのタイミングです。
しかしドル金利や円金利が高くなってくると、感覚の鋭い投資家は「そんなにリスクを取らなくても、安全な先進国で運用すればいいじゃないの」と考えて、新興市場のポジションをクローズします。私の経験だと、以下のような感覚があります。
「先進国の長期金利上昇は新興国の株価(ビジネスの価値)の魅力を減らし、短期金利上昇は投機資金の流入を鈍らせる」
で、投資家は先進国(主に日米欧)に回帰するわけですが、そのときに新興国にどれぐらいのショックが起こるかは「それまでにどれだけレバレッジが膨らんでいたか」によります。97-98年のように「円調達・外貨運用」のポジションがパンパンに膨らんでいれば、統計学上ありえないような円高がやってきます。
では、現在はどのような状態なのでしょうか?(続く)
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おはようございます。
いつもながら「なるほど~」と思いながら読んでいます。ブログを読んだ後に前に読んだ本で「チャイナクラッシュ」山崎養生(元ゴールドマンサックス)を引っ張り出して、再び読んでいます。その中で「外資に頼る中国で形成されたバブルの崩壊や景気の先行きを決定する最大のファクターは世界金利である。現在の中国国内の金利はドルに連動しているため低い。これが仮にいきなり大きな金利上昇の場面が訪れるならば、借金でかろうじて回っている中国経済はコスト高に耐え切れず簡単にクラッシュする」
この一節が印象に残っています。
投稿: 大和 | 2006年5月 4日 (木) 10時20分
♪ピーピー♪
イヨっ!待ってました!!
投稿: nicollo | 2006年5月 5日 (金) 21時36分
円高はどの程度まで進むんですかねー?
私が好きなニュースレターにちょっと面白い
ことが書いてあったので要旨を紹介します。
FEDはここしばらく短期金利を引き上げて
いますが、日本がゼロ金利と為替相場が円高に
なるのを介入で抑えているために、短期金利
の調節の効果が効きにくくなっていると論じて
います。そのため、円で借りれば低コストで
資金を調達できるという考えを壊すために
円高にして円キャリートレードをしている
連中をFEDなどが殺しに来るだろうと主張
しています。本当にそういうことが起きれば
ドル円相場は100円割るでしょうし、
そうなったときが実はキャリートレードを
仕掛けるいいタイミングになるんでしょうね。
ちなみに下記のニュースレターは円キャリー
トレードのレバレッジは安間さんとは違い
かなり溜っているという見解を持っている
ようです。
http://www.investorsinsight.com/otb_va.aspx?EditionID=320
投稿: 隆太郎 | 2006年5月10日 (水) 19時52分
中国で駐在してるメーカーのサラリーマンです。
人民元の動向について強くリクエストします。
何故なら給料の1/3が人民元で支払われていますので。。。
為替や物価の事はよく知りませんが、生活している感触ですと、
消費財
豚マン1元
500mlのペットボトル2.5元
タクシーの初乗り10元
米1kg3元
まあこの位です(地方によって異なりますが)。
大雑把に1元15円とすると、日本と比べて1/5~1/10位ととても割安です。
一方車、PC,デジカメ、新品の携帯、DVDプレーヤー等の耐久財は日本とそれ程変わらない様です。
何故消費財と耐久財で差があるのか不思議に感じております。
どうでもよいですが・・・
自分の住んでる所とか上海もそうですが、町のいたる所でクレーンが立っていて建設が止む事がありません(鉄骨は使用しているのですが、壁はレンガ積みで鉄筋は殆んど使用されていないようです)。地方からの流入人口で供給が満たされるのか、バブルで終わるのか興味深く見守っております。
投稿: 中国駐在 | 2006年5月13日 (土) 00時36分
中国で駐在してるメーカーのサラリーマンです。
人民元の動向について強くリクエストします。
何故なら給料の1/3が人民元で支払われていますので。。。
為替や物価の事はよく知りませんが、生活している感触ですと、
消費財
豚マン1元
500mlのペットボトル2.5元
タクシーの初乗り10元
米1kg3元
まあこの位です(地方によって異なりますが)。
大雑把に1元15円とすると、日本と比べて1/5~1/10位ととても割安です。
一方車、PC,デジカメ、新品の携帯、DVDプレーヤー等の耐久財は日本とそれ程変わらない様です。
何故消費財と耐久財で差があるのか不思議に感じております。
どうでもよいですが・・・
自分の住んでる所とか上海もそうですが、町のいたる所でクレーンが立っていて建設が止む事がありません(鉄骨は使用しているのですが、壁はレンガ積みで鉄筋は殆んど使用されていないようです)。地方からの流入人口で供給が満たされるのか、バブルで終わるのか興味深く見守っております。
投稿: 中国駐在 | 2006年5月13日 (土) 00時38分