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2007年7月11日 (水)

大量格下げはなぜ起こったか?(値付けの問題、格付けの問題)

(会員レポートの一部と重なりますが、公共性が高いと判断して加筆修正のうえ掲載します)

ここのところ紙面を賑わせている問題に、アメリカで信用力の低い個人(サブプライム)向け高金利型住宅ローンを担保にした証券が大量格下げされたことがあります。たとえばこれまでAA格だった証券が、投資不適格であるB格に下げられたりするわけですね。

それら証券価格の急落がなにをもたらすかについてはマスメディアや他ブログで取り上げてくれています。だから私は「そもそも構造がどうなっていて、何でこんな問題が起こるのよ?」ということを書きます。

まずは、用語の確認から。

************************************

サブプライムローン

=低所得者やカード延滞者など、信用力の低い層を相手に貸し出す住宅ローン。リスクが高いので金利も高い。

************************************

RMBS (住宅ローン担保証券、Residential Mortgage Backed Securities)

=住宅ローンを担保として発行される証券。

************************************

CDO(Collateralized Debt Obligation)

社債や貸出債権(ローン)などから構成される資産を担保として発行される資産担保証券の一種 http://m-words.jp/w/CDO.html

************************************

 

証券化商品にはいろいろあるんですけど、基本的な構造は同じです。というのも資産側に社債やら債権やらを詰め込んだ会社を作って、返済順位が高い順番に切り分けて、投資家に売っているだけなんです。

 

証券化商品 (含むCDO・MBS・RMBS)の構造

-----------------------------
|             |シニアデットAA格   |   ↓高い
|              |---------------|    ↓
|              |サブデットBBB格  |    ↓ 
|    資産   |---------------|     ↓   返済順位
|              |サブデットC格      |   ↓
|              |---------------|    ↓
|              | E (エクイティ)      |   ↓低い
-----------------------------

こういったしくみの左側(資産)に住宅ローンを詰め込んだらRMBSになりますし、住宅ローンに限らず不動産を詰め込んだものはMBS(Mortgage Backed Securities不動産ローン担保証券)と呼ばれます。社債や貸出債権(ローン)だとCDOですかね。これらは広くABS(Asset Backed Securities資産担保証券)と呼ばれています。自分でもよくわからん部分があるんですが、懐かしい「含む記号⊃」を使って表現してみます。

ABS  ⊃ CDO ⊃ MBS ⊃ RMBS

************************************

 

余談になりますが、CDO(Collateralized Debt Obligation)というネーミングは昔から不思議でした。というものCollateralized(担保付き)と言いながら中に入っているものが無担保の社債だったり、ローンだったりすることがあるからです。さらにはDebt にもObligationにも「借金、負債」という意味があるので、どちらか一方で足りるのではないかと思ったものです。しかし、「シーディーオー」という言葉の響きがあまりにもカッコ良かったので、若かった私は許すことにしました。

それにそんなことを言い始めると、ABS(資産担保証券)についても「資産を担保にしない証券があるのか?」という禅問答にハマって眠れなくなります。だからあなたも深く考えすぎてはいけません。

************************************

 

この手法の賢いところは、どんなクズ資産を集めても返済順位が高ければ、それなりの格付けを得られるということです。極端な話、たとえば貸し金のうち20%しか戻って来る可能性のないクズ貸付債権の集合体であっても、返済順位が最も高い10%だけを切り取って評価すれば、さらに倍(10%)の余裕があるので返済の可能性が高いと考えることができます。返済順位の高いものをシニアデットと呼びますが、返済上位10% だけを切り取ればAAAという高格付けを得ることも可能なのです。

こうして切り分けられたそれぞれの部分(証券)を「トランシェ(フランス語で一切れの意)」「トランチ」、切り分けることを「トランチング」と呼びます。

これは別に魔法でも、インチキでもありません。ローリスク・ローリターンで良いと考える投資家はAAA格の上位債券(シニアデット)を買えばよいし、ハイリスク・ハイリターンを狙うならそれより返済順位が下の債券や株を安く買えば良いわけです。アメリカでは古くからある技術です。

そもそも普通の会社だって、「デット(債券・貸付)」と「エクイティ(株式)」という2種類のトランチングを行っています。金利にプレミアムを付けてもらうだけで良いと考える投資家はデットを買うし、リスクが高くても儲けを狙いたいと思う投資家がエクイティを買う。そして返済順位の低い株(エクイティ)で、大儲けしただの丸損しただのという話も同じです。

まあこのあたりはプロにとっては常識なんですけど、わかりやすく説明してくれる人がいないんですよね。「資産運用のカラクリ1」http://tinyurl.com/2oz6eqを読んだ人にはピンと来る話だと思いますが。

 

普通の会社(デットとエクイティの2種類にトランチング)

---------------------------
|               | デットAA格     |  ↓高い
|    資産    |-------------|    ↓       返済順位
|              | エクイティ       |   ↓低い
  ----------------------------

************************************

 

こういった構造を理解すれば、「サブプライムの低位CDOはレバレッジかけてジャンク債に投資しているのと同じ」ということがわかるでしょう。しかしそんなものは債務超過で破綻寸前の株を買うのと同じことなので、投資家のほうもそれを織り込んで安く買っていますからショックもありません。より問題となるのは、「通常の倒産確率であれば回収できると思って、格付け会社がAAA・AAなどの高格付けを与えた。しかし実際に倒産したら思ったより回収できなくて、高格付けにもかかわらず元本が戻って来なかった」というケースです。

サブプライムの借り手はワケアリで住宅ローンが借りられないため、高めの金利を払ってでも融資を受けたい低信用の人々です。金利が上がったり、ボーナスが減ったり、何よりも住宅価格が上がってくれないとすぐに飛んじゃいます。で、格付け会社はたとえば「不動産担保もあるし、いくらなんでも9割は戻って来るだろう」踏んで上位80% にAA格を付けました。しかし不動産市場が冷え込んで借り手が破産すると、担保不動産を売っても7割しか回収できなかった。そうなるとAA格だった債券が元本割れの可能性が出てきて、格下げせざるをえなくなります。

今回の大量格下げの原因には、不動産価格の上昇が続くことに慣れてしまったがゆえの格付けの甘さがありそうです。これが「格付けの問題」です。

本当のことを言うと、サブプライム自体の変動が大きいので、それを担保にした証券は保守的に格付けをすべきです。回収率の変動性(ボラティリティ)をも織り込んだほうが、より正確な格付けができるはず。ただし回収率やその変動性は均質ではないので、どうしても最近の状況を手がかりにします。そして返済状況があまりに良い状態が続いてしまうと、まるでリスクがなくなってしまったかのような錯覚を覚えてしまうことがありえます。

さらに発行側としては格付けが高いほうが資金調達に有利なので、保守的に低く格付けされることを好みません。あなたが債券を発行するとして、最近の状況からAAA格をくれる格付け会社と、将来の信用悪化を正確に予測してBBをくれる格付け会社のどちらに手数料を払いますか? 極端でいやらしい例えですが、そういう要因もありそうです。

************************************

 

そのデリバティブになると、もっと話はややこしくなります。というのももとになる証券(原証券)の価格もあやふやだし、その派生商品ともなればトレーダーが自分で値付けしていたりするからです。誰だってクビにされたりボーナスが減ったりするのはイヤなので、資産価格が急落して大損しているかもしれないと思っていても、その度合いをちょっと「調整」してみたりします。おっと、他社のトレーダーに「適正価値」を聞いても無駄ですよ。だって彼らも同じ悩みを抱えた仲間だったりするんですから

それでしばらく様子を見ます。ほどなく資産価格が回復して事なきを得るならラッキー。逆にどうしようもなくなるのであれば「スミマセン、実は…」と言って損失を出すしかありません。ずっと後になってから巨額の損失が突然現れ、マスコミで騒がれる。これが「値付けの問題」です。

************************************

 

こうして考えると、今回のCDOがらみの騒動は、昔から市場にある同じ問題に突き当たります。つまり、誰がどうやって資産価格を決めるのかという問題です。

株式市場の場合、昔はあまりにも粉飾決算やサギが横行したため、それを防ぐべく証券取引法や会計制度が発達しました。今では単純な粉飾を働くことはかなり難しくなったものの、知的所有権の資産計上だの連結飛ばしだのといった手法でお化粧を施すことはできます。

エンロンのように、アナリストたちがこぞって買い推奨していた企業が突然破綻するということは今でもありえます。格付け会社についても同様で、急激な資産劣化に追いつけず、債券価格が十分に下がってしまってから後追いで格下げするということはありえます。

このように、「値付けの問題、格付けの問題」は先進国のメジャー市場でも発生します。CDOのような新しい市場だとか、法律や裁判制度などが整備されていない未開の国ではその欠点が増幅されるだけなのです。

************************************

 

アメリカの住宅価格が上がっているうちはサブプライムの問題も覆い隠されていました。今は調子の良い新興国株式も、いったん調整が始まれば信じられない不正が発覚するでしょう(不正が発覚しないほど汚れた国のほうが多いかもしれませんが)。いくら市場が進化しても、「値付けの問題」「格付けの問題」はなくならないのだなあと痛感します。

 

「潮が引いてはじめて、誰が裸で泳いでいたかがわかる」
By ウォーレン・バフェット

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コメント

結局格付けの問題は「そんなに正確に資産評価が出来るなら格付け会社なんか勤めずに、ファンドマネージャーになれば良いじゃないか。そのほうが給料良いだろ?」ってところに収斂されちゃうんですけどね。(笑)

「格付け会社のアナリスト=ファンドマネージャーになれない人」っていう身も蓋もないお話でした。♪ちゃんちゃん♪

nicolloさん

それは厳しすぎますがな(笑)。
運用側から言うと、彼らは調査を自分の代わりにやってくれるのでありがたい存在です。しかし状況はいつでも変わりうるので、「最後は自分で考えて身を守らないと大損するよ」という教訓はあると思います。

簡単に説明してくれる人がいない? フフフ・・・。では私めが簡単に。

・サブプライム債券。「坂上二郎債券」と覚えましょう。すぐに「飛びます、飛びます」。

・坂上二郎債券を手っ取り早く現金化したい→証券化してバラ売り。しかし坂上二郎債券にもすぐに「飛びます、飛びます」しそうなものと、それほど飛びそうにないものもある。「松・坂上二郎債券」「梅・坂上二郎債券」「竹・坂上二郎債券」と、さらにバラす。

・金融派生商品にうまくブレンドして(つまり紛れ込ませて)、美味しそうに見せて消費者に売りさばく。これは「ミートホープ」と覚えましょう。

・「ミートホープ」がバレないでみんなが美味しいと買ってくれるので、さらにエスカレート。クズ肉にダンボールを4:6で混ぜた「ダンボール肉まん」が出現。

・さすがに「なんかこれ、おかしくね?」と気づきはじめる。ババ抜きゲームの終わりが始まっている。

師範、こんなところで如何でしょうか。

ここに来て、サブプライム問題butダウ最高値、エマージングも高値更新と何か怪しい!約10年前に、円ドルが143円から一気に20円以上も巻き戻った時と何か近い雰囲気を感じるのは私だけでしょうか。売り買いは、相手がいるから成り立つという大原則が置き去られている気がして、ついついキャッシュポジションが膨らむ今日この頃です。

ザ・クマ川さん

さすが、M山さんの教えを受けているだけはありますね。古いネタから最新ネタまで、見事な複合技です。「バレなきゃさらにエスカレート」っていうのはニセ食品にも投資商品にも共通することだと目から鱗が落ちました。

ナッキーさん

確かに気持ち悪いですよね。ただし先進国の大型株は割安なので、私は相変わらずしこたま株を持ってます。怖いのは新興国株式と円高への巻き戻しでしょう。いつ反動が来るかわからないので、深追いしないようにしています。

はじめまして。いつも楽しく読ませて頂いています。最近は、ブログの更新が続いて嬉しい限りです。

さて、証券化商品の関係式ですが、

       MBS ⊃RMBS 

ではないのでしょうか?

γさん

やってしまいました…(笑)。

ご指摘ありがとうございます。さっそく直します。

以下のひとのブログにいき、上記の説明を無断で使わせていただき、さらにかってな説明を加えさせていただきました。失礼をお許し下さい。
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/b259fbd7ef88e55201a2a3d8d4441c1a

吉行誠さん

ご紹介いただき、ありがとうございます。それは私の説明ではなくクマ川さんの書き込みですけどね。

ともあれ、わかりやすく学べるサイトを目指してますので今後ともよろしくお願いいたします。

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