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2007年10月23日 (火)

FX証拠金取引が持つクレジットリスク

シリーズものの途中ですが、気になる事件があったので書きます。

  
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Nikkei Net   更新:10月23日
http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20071022c3c2201522.html
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エフエックス札幌が経営破綻・投資家の半数は道内個人

 外国為替取引の失敗から債務超過に陥っていた札幌市の外為証拠金取引(FX)業者、エフエックス札幌(破産管財人・開本英幸弁護士)が22日、588人の投資家から証拠金を預かったまま経営破綻した。投資家の半数は道内の個人。財務状態からみて証拠金の保全は極めて微妙だ。市場変動に大きく左右される高リスク商品に潜む「業者リスク」も見せつけた。

 札幌地裁に同日午前、破産手続き開始を申し立て、即日の開始決定を受けた。負債総額は約23億3000万円。道内に本店を置く唯一のFX業者だった。

 開本管財人によると、破綻の原因は米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に伴う8月中旬の急激な円高・ドル安だった。円の急速な値上がりを受けて顧客から大量に集まった注文を海外の金融機関に取り次ごうとしたが、失敗。その取引に伴って大幅な損失が発生したという。海外業者の混乱で成約が最大数時間遅れ、その間の市場変動で十数億円程度の損失を受けたとみられる。

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実は8月20日の段階で、会員サイトのほうではこんなこともあるだろうと話し合っていました。というのも別の業者さんですが、いったん決めた取引を反故にされたケースが報告されたからです。

  • 「本日午前6時25分01秒から、メンテナンスが開始された午前6時29分までに一旦約定いたしました全ての注文(異常レートであったニュージーランド/円以外の注文を含む)を○○外国為替証拠金取引約款第××条に規定された異常レートの事由に基づく処理として取り扱い、例外なく同一に無効とさせていただきました。」
     
  • 113円ローのドル円買いと88円ローの豪ドル買いを約定したのですが、このメール1本で無効にされました。これも一種の詐欺ですねえ。まあ約款に書いてあることは事実だし、別にこの業者が特別なわけではないですが・・・。
     
  • ところで、ここまで個人投資家がFXで痛い目に会うと、それに「与信」していたFX業者も無傷ではすまないと思うんですよね。どこか飛んだりするのかな? それとも約款でバックレるんだろうか(笑)。

 

以前から本やブログで、「証拠金取引というのはその業者に与信する(カネを貸す)行為ですよ。だからその業者が信用できるのか、また投資家保護のしくみとして分別管理や保証制度がどうなっているのか確認してくださいね」ということは言ってきました。

  1. Aさんが100万円をFX業者に預け、10万ドルを買ったとする。うまくドルが値上がりして100万円を儲け、自己資金は200万円になった。
  2. この時点でAさんはFX業者に200万円を貸していることになり(与信)、もし業者が潰れた場合は商法のルールにのっとって返済を求めることになる。多くの場合はほとんど戻ってこないと思っていたほうが良い。
  3. 信託銀行などで分別管理されている場合でも自己資金100万円だけで、含み益100万円は保護されていない場合がある。(規約による)

一方、FX業者のほうは価格変動リスクを取りたくないので、普通は市場でヘッジをするはずです。たとえばAさんが10万ドルを買い、Bさんが3万ドルを売っているのなら、顧客のポジションはネットで+7万ドルになります。するとその相手になっているFX業者は逆に7万ドル売りポジションを持っていることになるので、市場で7万ドルを買って(カバーして)自分のリスクをほぼゼロにするわけです。

  Aさん +10万ドル
     Bさん  -3万ドル
    ___________________________________
= 顧客ポジ+7万ドル
         ↑取引相手になる

FX業者    -7万ドル
         ↑ 市場でカバーしてチャラに
         +7万ドル 

エフエックス札幌のケースでは、このカバー取引が間に合わず損失を食らったと書いてあります。

 

それで調べてみたのですが、業者の中にはレバレッジ100倍以上の取引が可能なところもあるんですね。中には200倍以上とか。これには驚きました。

しかしよくよく考えてみると、レバレッジ100倍とか200倍とかいう世界では、その業者がヘッジをちゃんとやっているかとか、分別管理しているかという問題ではなく、実質的にある顧客から別の顧客に対して与信行為(貸し付け)が発生しているんじゃないかと思いました。

たとえばあるFX業者のお客がAさんBさんのふたりしかおらず、それぞれ100万円の証拠金で100万ドルのポジションを正反対に取っていたとします(レバレッジ約115倍)。

              ポジション   証拠金   損益  
Aさん  -100万ドル  100万円   0円 
Bさん   +100万ドル  100万円   0円
   ________________________________________________________
顧客合計    ±0   200万円   ±0

顧客のポジションが相殺しあっているので、差額を市場でカバーする必要もありませんね。このままであればFX業者としても、スワップ金利の差額を毎日いただくことができます。

しかし急に円高になって、それぞれ1000万円の損益が発生したらどうなるでしょうか?

             ポジション   証拠金   損益  
Aさん  -100万ドル  100万円 +1000万円 
Bさん   +100万ドル  100万円 -1000万円
   ________________________________________________________
顧客合計    ±0   200万円   ±0

はいはい、顧客の合計は全く変化してないですね。今日も平和な一日だった、と。

ところでBさん。証拠金100万だけじゃ足りませんから不足分の1000万円を追加してくださいよ。Aさんも楽しみに待っていますからね。

「・・・い」

え? よく聞こえませんけど。

「・・・ない」

もう一回、はっきり言ってみてください。

「はらえ・・・ない」

・・・

・・・

なにい! 払えんじゃとぉ!!!

  Σ( ̄□ ̄|||)

 

考えてみればわかりますが、この瞬間にお互いの関係はこうなっています。

Bさん (債務1000万円) 
       ↓↓↓
FX業者(債権1000万円)(債務1000万円)
                  ↓↓↓
Aさん            (債権1000万円)

AさんもBさんも証拠金を1000万円入れているのであれば、FX業者はBさんの証拠金をAさんの口座に移しかえて終わりです。しかしこの場合の証拠金は100万円なので、Bさんが債務をバックレてしまえばFX業者は少なくとも900万円を立て替えてAさんへの債務を支払わなければなりません。

そう、FX業者はBさんに無担保の与信をしており、それを取り立てないと自分のほうが倒産してしまうリスクにさらされているのです。

でもしょうがないですよね、為替変動によって発生する潜在的な偶発債務に対して、1%にも満たない証拠金しか求めていないのであれば、それはほぼ無担保で貸しているのと同じことです。これは難しい言葉で言うと、「マーケットリスクはヘッジされていても、潜在的クレジットリスクを取っている」状態です。

銀行では不動産融資をするときに、担保の価値を見てその6割など余裕を見て貸し出しをします。証券も信用取引を認めても、せいぜい4倍ぐらいまでですよね。それなのにはるかに価格変動が大きいFXに対して5%の証拠金も取らないなんて危なくてしょうがないでっせ。

 

このように、ハイレバFX業者は、顧客に対して潜在的な与信リスクを抱えています。

さらにFX業者に顧客の損をカバーする体力がないのであれば、FX業者をスルーする形で実質的にある顧客から別の顧客に対して与信行為が発生しているのです。

上のケースでFX業者が倒産してしまえば、Aさんは1000万円の利益を回収することはできないでしょう。おそらくタネ銭の証拠金100万円も返ってこないと思います。結果的にはAさんがBさんに無担保で1100万円を貸して、逃げられたのと同じことです。「見知らぬ誰かに無担保でカネを貸しているようなもん」ということですな.。

 

Bさん(債務1000万円) 
     ↓↓↓
     ↓↓↓ FX業者の自己資本が
     ↓↓↓ 小さければ、ほぼスルー状態
     ↓↓↓ 
Aさん(債権1000万円)

 

「じゃあ、FX業者を相手にハイレバ運用すればいいんだな。儲かったら勝ち逃げして、損したら逃げると。これこそフリーランチ。フリーオプションだ!」

そう考えたあなた、お気をつけあそばせ。高いレバレッジを認めている業者には、損したときに債務を払う意思も能力もない顧客が群がってくる可能性があります。そのFX業者を通じてあなたが与信するかもしれない相手の信用は劣悪です。そう、損したらバックレようと考えている今のあなたぐらいに(笑)。ということはあなたが取引で大きく儲けた場合でも、素直に払ってもらえる可能性は低くなります。

  

こういった「隠れた与信リスク」は、普通の借金と違って認識されにくいものです。なぜなら以下の要素が不確定なので、実際に発生するまでは「カネを貸している(与信)状態にある」ということにすら気づかないからです。

  1. いつ発生するのか、発生するかどうかすらわからない
  2. 金額がいくらになるかわからない(自己資本+儲けた額)
  3. 債権者・債務者の立場が逆になる可能性がある

こういったリスクまで投資家に理解されるようになれば、経済で言う「逆選択」の問題が発生し、高いレバレッジを認めているFX業者の存続自体が困難になるかもしれませんね。

(続く)

  

「与信と受信」「有限責任の魔法」「返済の意思と能力」についてピンと来ない方は、拙著「資産運用のカラクリ2 第3章カネを貸してはいけない相手」を参照のこと。

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コメント

いつも更新を楽しみにしています。コメントを書き込むのは初めてです。

今回の記事、すばらしいです。これ一本で十分情報料が取れる内容です。
私自身は本業が忙しくなってきたこともあり、信用取引などのハイリスク商品からは手を引いていますが、今回の記事を全国のFXをやっている方々に売り歩きたいような気持ちです。

これからも更新楽しみにしています。

えー中でくっつけちゃうんですか?(驚)
インターバンクに注文出してるかと思ったんですが。。。

でも1万ドル程度じゃ割に合わないんですね。
くりっく365貴重ですわ。

それは、いわゆる「ノミ屋」では?(笑)

yamadaさん

ありがとうございます。そう言っていただけると、励みになります。お礼として続編を書きますので、お楽しみください。

nicolloさん、ばや氏さん、

ノミ屋とそっくりの金融商品は多いですよ。アセットスワップやCFD(Contract for difference)なんかそうですね。

自分が持っている顧客が反対のポジションを取ってくれるのなら、FX業者ならオファービッドスプレッドが取れますし、ノミ屋なら(25%の税金以下になりますが)手数料が取れます。

ノミ屋の顧客はクレジットリスクのことなんか意識していないかもしれませんけどね(笑)。

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