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2007年11月 5日 (月)

FX証拠金取引が持つクレジットリスク(3)金融業とノミ屋

本シリーズの「FX証拠金取引が持つクレジットリスク(1)」で、「それってノミ屋では?」という書き込みがあってから考えました。

失礼を覚悟で言えば、FX証拠金はノミ屋そのものです。つまり顧客から受けたリスクをいったん「丸呑み」し、為替市場でヘッジし、鞘を抜いた後のリターンを渡すからです。

顧客の証拠金をまとめて保全することはあっても、顧客の玉一本一本を分別管理することはありません。「Aさんのドル買いは東京三菱でヘッジしてあります。だから弊社にもしものことがあっても大丈夫です」ということではないのです。あなたの取引相手はFX業者そのものであり東京三菱ではないのですから、クレジットリスクもFX業者に対してのものになるということです。と、ここまでがこれまでの話でした。

 

「では逆に、ノミ屋ではない金融業者ってのがあるのか?」

と考えたのが今回の話題です。

 

銀行は顧客の預金をいったん「丸呑み」し、それを企業や個人に貸し出して利ざやを稼ぎます。あなたの預金はいま、X社のエレベータを吊っているワイヤになってますだとか、社長室に飾ってある名画の額縁になってますとか、いちいち報告されることはありません。生損保も同じで、あなたの掛け金が何になってますといちいち報告することはありません。

小口の資金を集めて大口にすれば、効率的に運用ができます。そうは言っても資金を集めるにはそれなりの信用がないとダメです。そこで国が特別に認可を与えた銀行や生損保が、その役割を担っているわけですな。しくみとしてはノミ屋的であってもそれは資本主義に必要な効率化のためで、立派に社会の役に立っていると言えるでしょう。

逆に言えば、こういった業界は顧客の信用をなくしてしまうと一気に存亡の危機にさらされます。というのも預金者のほうが銀行のクレジットリスクを恐がって、預金を引き上げることがありうるからです。銀行の資産は他の会社に貸したきりなのに、資金が流出となれば、いくら収益性が高くても目先の資金調達ができなくなって倒産してしまいます。

 

では証券はどうかというと、基本的にはノミ屋ではありません。なぜなら個人が持っている株は証券保管振替機構などに保管され、証券会社が潰れても投資家の持分はすべて保護されているからです。

しかし例外的に、ノミ屋的な商品もあります。たとえばアセットスワップやCDF(Contract for difference)という商品は、その証券会社がある資産のリスクリターンを投資家に渡す約束です。当然ながら証券会社はヘッジをかけるでしょうが、投資家が利益を出しているときは証券会社に対してクレジットリスクを負担していることには変わりありません。

それから投信や投資顧問、これはノミ屋的ではありませんね。というのも資産はすべて信託銀行に預けられていますから、投資のアドバイスのプロである彼らが潰れても財産が保全されているんです。ポートフォリオが放置されることはあっても、基本的に投信・投資顧問に使い込まれてなくなることはありません。もっとも、そういった安全なファンドを装ったサギ商品も後を絶たないわけですが(笑)。

 

ここまで書いて、むかし成毛眞さん(元マイクロソフト日本法人社長)が神田昌典さんとの対談で、「バランスシートを持たない金融業をやろうと考えた」と話していたことを思い出しました。つまり大きな資産を持つ銀行・生損保ではなく、証券や投信投資顧問をやろうかと考えたということです。

その分類のしかたに「ほおー、この人メチャ賢いわ」と感動した覚えがあります。なぜなら同じ金融業者でも、そんな違いを意識している人にはお目にかかったことがなかったからです。

結局、成毛さんは成果報酬型コンサル会社のインスパイアを立ち上げました。これはヘッジファンド的な報酬体系を持つ、投信投資顧問に近い仕事であると理解してよいでしょう。

 

くどいようですが、ノミ屋的な金融業が悪いわけではありません。資金を効率的に運用する資本主義の目的の上で発達した仕事です。

しかし投資家としては、「いったい自分は誰に対して、どんなリスクを取っているのか」を常に意識しておくべきでしょう。その相手が銀行であれ生損保であれFX業者であれ、基本的な考えは同じです。

(終)

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