毒入り餃子の話で次々に続報が出てきています。
私も本業が忙しくなって「ブログ書いてる場合かよ!」と自己ツッコミをしてみたりもするのですが、これは良い教材だと思うので話を続けましょう。
というのも「加害者がいつの間にか被害者ヅラして、日本に謝罪と賠償を求める」というメカニズムがこの事件の中によく現れているからです。
さて毒入り餃子事件のその後をまとめてみますと、やっぱり中国側は自分の非を認めません。
- (品質上・制度上)日本では使われていない農薬が、
- 袋の内側から、
- 同時に複数の場所から発見されている
という時点で製造過程に入り込んだとしか考えられないのですが、その可能性を日本の警察が指摘するだけで「不愉快」だそうです。まあ、予想通りの反応といえるでしょう。
しかし中国様に「報道するな!」と言われたのに、日本のメディアが続報を出し続けるのには驚きましたね。しまいにはスピルバーグ氏が北京オリンピックの担当を降りたこと、その原因はダルフールで20万人ほど住民が殺されていることに中国が関与していることなどを報道していることにはたまげました。知っている人は1年近く前から知っている昔のネタですが、グッドジョブだと思います。
ついでながら今は中国食品の「農薬」だけが問題になっていますが、さらにやっかいなのは重金属(鉛・水銀・カドミウムなど)やニセ塩(亜硝酸塩)などです。前者は長い時間をかけて体に蓄積され、障害を引き起こします。ニセ塩は量によっては一発で天国逝きですね。まあ、「中国の食品は安全だ」と言っている方だけでご賞味ください(笑)。
あと報道してほしいのは、米国などでは中国産ペットフードでペットが大量死し訴訟問題になっているということ。飼い犬や飼い猫の体調が悪かったり、原因不明で亡くしてしまった人は、ペットフードを調べたほうがよいかもしれません。我々にとっては常識でも、まだ知らない人がたくさんいるかもしれませんから。
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毎日新聞 2008年2月7日 10時50分 (最終更新時間 2月7日 11時24分)
http://mainichi.jp/select/today/news/20080207k0000e030023000c.html
米国:ペットフード事件で製造・輸出した中国企業を起訴
【ワシントン斉藤信宏】米ミズーリ州の連邦大陪審は6日、中国産の原材料を使ったペットフードを食べた犬や猫が昨年3月以降に相次いで死んだ事件で、ペットフードの製造と輸出に関与した中国企業2社などを起訴した。米食品医薬品局(FDA)が同日、発表した。中国製品の安全性に関する問題で、中国の国外で刑事責任が追及されるのは異例。
起訴されたのは中国企業2社のほか、輸入を担当したネバダ州の米国企業。発表によると、3社は共謀して、タンパク質の含有量が基準を満たしていないにもかかわらず、06年11月から07年2月まで「小麦グルテン」と偽って申告した有害な原料800トンを米国に輸入した。
ペットフード事件は昨年3月、カナダ企業が6000万個にのぼる大規模なリコールを発表したのがきっかけで発覚した。犬や猫が腎臓の機能障害で死んだとの顧客からの訴えを受けてFDAが調べたところ、中国から輸入されて原材料に使われた小麦グルテンから有害物質のメラミンを検出、輸入禁止の措置が取られた。(以下略)
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本題に入りましょう。
今は「農薬を誰かが入れた」という前提で、日中両国が「自国ではない」と言っています。実は「誰かが入れなくても食物に農薬や重金属が紛れ込んでしまう」というのが中国製品の醍醐味なのですが、それを言うともっとヤバイことになるので「誰かがやった」ことで落としどころを探っているんでしょうね。
ちなみに私が一番濃厚だと思っているのは「ええー、ワタシ入れてないしぃー。この工場だけじゃないしぃー。農薬だけでもないしぃー。ちゃんと賄賂も払ってるのに、ワタシだけ、しかも今回からイキナリ言われるのってヒドクナイ?」という天然オチです。笑えないですが、驚きはしません。
しかしそうなると次に「じゃあ誰なのよ?」という話になる。日中どちらかが犯人を出さなければならないわけです。まあ犯人がわかっても売れるとは思いませんが(笑)。
日本側で容疑者がいるのなら、とっくにスケープゴートにしているでしょう。賞味期限の偽装で会社が潰れるまで叩き続ける日本のメディアが、毒を入れた会社を放っておくわけありませんよね? 怪しい「元従業員」までキャスティングするぐらいの熱意を持っているんですから。今回はどう考えても日本の責任ではない--だから中国様の擁護に回っているわけです。
では中国側はどうか?
証拠隠滅が終わると、工場の責任者が「我々が最大の被害者」と言い出しましたよね。
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工場長「我々が最大の被害者」 ギョーザ中毒事件(02/15 20:48)
北海道新聞 2008年2月15日
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/76299.html
【石家荘(中国河北省)15日共同】中国製ギョーザ中毒事件で、河北省石家荘市にある製造元「天洋食品」の底夢路工場長が15日、市内で記者会見し「製品の品質は保証されており、われわれは事実上この事件の最大の被害者だ。名誉も大きく傷ついた」と述べ、今後賠償請求についても検討する姿勢を示した。 (後略)
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それに反論がないと見るや、今度は「毒入り餃子は日本のせい。損害賠償を求めるべき」という声が中国国内から上がるようになりました。
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毒ギョーザ「日本のせい」中国では「事件解決済み」
「日本に賠償求めるべき」との声も
ZAKZAK 2008/02/21
http://www.zakzak.co.jp/top/2008_02/t2008022123_all.html
日本での事件をほとんど知らされていない中国では、笑顔でギョーザにパクつく市民の姿が見られる(AP、クリックで拡大)
毒ギョーザ事件をめぐり、中国国内で「事件は解決済み」との世論が台頭している。徳島県のケースで農薬は日本で付着したと判明したことで、中国メディアが一斉に≪ギョーザ事件と中国は無関係≫と報じたため、「事件はすべて日本のせい」との風評が生じた。「日本に謝罪と賠償を求めるべき!」との声まで登場する始末で、早急に幕引きしたい中国当局の本音が透けて見える。
毒ギョーザ事件は広がりを見せており、みやぎ生協が回収した「CO・OP手作り餃子」の袋から、高濃度の「ジクロルボス」とともに、微量の強毒性農薬「パラチオン」も検出された。「中国犯人説」が強まっているが、現地ではどこ吹く風のようだ。
≪日本の徳島県がギョーザ中毒事件と中国は無関係と宣言≫。製造元の「天洋食品」がある河北省の地元紙などが16日にこんな見出しの記事を一斉に報じた。
≪徳島県知事は県内で発生した「ジクロルボスギョーザ」が一連の「中国ギョーザ事件」と関係ないと確定し、店内で不正使用された殺虫剤が原因と宣言した≫(「環球時報」)。
国営通信「新華社」の配信を受け、これまであまり報じることのなかったテレビメディアまで大々的に報道。多くの人々には事件の詳細が知らされぬまま、「事件と中国は無関係」といきなり告げられた形だ。
中国のネットもさっそく炎上した。≪言わんこっちゃない≫≪工場側は日本に損害賠償を求めるべき≫≪日本の大臣が謝罪しろ≫≪日本は賠償として今年の中国製ギョーザを全部買うべき≫(後略)
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中国製「毒ギョウザ」事件 中国で広がる「日本の陰謀説」
j-castニュース2008/02/22
http://www.j-cast.com/2008/02/22017029.html
冷凍ギョウザをはじめ中国製食品で相次いで殺虫剤混入が明らかになった問題で、国内では中国で殺虫剤が混入したことが濃厚との見方が大半だ。しかし、中国では「日本に責任がある」という主張が広がっている。ネット上では、「日本は謝罪すべきだ」「日本側が国内で農薬が混入したことを認めたはずだ」といった書き込みが出始めている。(後略)
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これは典型的なケースだと思います。
というのも政府や工場長が「俺は悪くない。おまえが悪いんじゃあ!」と言ってウソ八百を並べているうちに周囲がそれを信じるようになって、相手にしてみればわけがわからないことを言い出すのです。
その根本原因は、
- 情報統制がなされている。(だから歴史を知らない。海外を知らない)
- 自分が信じたいことしか信じることができず。論理的思考が出来ない。
- したがって、デマに弱い。
ことにあります。
これは深刻な弱点なのですが、相手が「大人の対応」とやらで反撃せずにいると、彼らはますます自信を深めて傍若無人ぶりをエスカレートさせます。
その格好のカモになったのが、日本の「土下座外交」です。(続く)
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