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2009年10月16日 (金)

基軸通貨の本質(3)

吾輩はのび太である。名前は一応ある。

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どこで生れたかとんと見当(けんとう)がつかぬ。

何でもまったり鎖国をしていたところに、ジャイアンが来て開国を迫られた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて異人というものを見た。

しかもあとで聞くとそれは捕鯨のためにやってきたそうな。今になってジャイアンに捕鯨のことを責められるとは、世の中わからぬものである。

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吾輩をボコボコにしたジャイアンもつきあってみると良い奴で、
吾輩の作ったものを買ってくれたり、ならず者から守ってくれたり、取り上げた島を返してくれたりもした。

製品が売れるので我輩の家には通貨ジャイが貯まり、
世界一の「債権国」ということになった。

要するに、金持ちである。

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しかし、何かがおかしい。

金持ちとおだてられてはいるが、
うまく利用されているような気がするのだ。

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吾輩の通貨「ノビー」が高くなると、ジャイアンが製品を買ってくれなくなる。
そこでノビーを売って、ジャイを買う。
こうすればまた製品が売れるようになる。

よかった。
これでまた輸出が増えて儲かる。

しかしよくよく考えると、吾輩の財布の中でまたジャイが増えているではないか!

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ジャイの金利は高いから、これは良い資産運用なのだと自分が言い聞かせているが、それと同じかそれ以上にジャイの価値が減る。

稼いでも稼いでも楽になれないのは、ジャイアンにタダ働きさせられているからではないかと思えるのである。

もしかして、吾輩はカモられているのだろうか?

「今まで気付かなかったの? のび太君」

どこかでシズカの声が聞こえたような気がした。

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ある日、スネ夫がやって来て言った。

「このままジャイの価値が下がったんじゃあ、みんな大損だ。みんなでジャイアンに抗議して、無駄遣いをやめさせようぜ。俺がみんなを指導して会議を招集するから、お前はジャイアンに抗議する役な」

なるほど良い考えだと思い、吾輩は賛成した。

「また貧乏くじを押し付けられちゃったの? のび太君」

どこかでシズカの声が聞こえたような気がした。

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会議の日。

のび太はみんなを代表してジャイアンに抗議した。

シズカははらはらしながら見守っていた。
スネ夫は物陰からじっと見ていた。
みんな緊張していた。

ジャイアンは目を閉じて聞いていた。

のび太の話が終わっても、殴りはしなかった。
目を開け、そして静かに演説を始めた。

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「諸君。誠に申し訳ないことをした。確かに今のジャイは信頼を失いつつある。これはひとえに私の不徳のいたすところだ。申し訳ない」

みんな驚いた。ジャイアンは続けた。

「そこで考えた。まずはインフレを止めるためにデノミを行おうと。そうすれば人心が一新し、チェンジが生まれると確信している。イエス・ウイ・キャン!」

ジャイアンはポケットから何やら取り出した。

「新しい通貨はこれ。名前は『ジャイコ』だ!」

「そっ、それは!」
ただのドングリにしか見えないんですけど!」

みなが口々に叫ぶのを無視して、ジャイアンは続けた。

「この新しい通貨は、公正で中立な立場にあるジャイ子がその価値を保証する。
これなら文句ねえだろ。100ジャイを1ジャイコの比率で交換してやるから感謝しろ!」

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シズカは開いた口が塞がらなかった。
スネ夫は倒れたきり、動かなくなった。
みんな真っ白に燃え尽きた。

のび太だけが両腕いっぱいにドングリを抱えて、嬉しそうに帰っていった。

(終)

2009年10月 9日 (金)

基軸通貨の本質(2)

骨川スネ夫は激怒した。

必ず、かの邪智暴虐のジャイアンを除かなければならぬと決意した。

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ジャイアンだけが基軸通貨メリットを享受するのは不公平だ。

仮にこれを全世界でやったとしたら、円換算で年間4兆円とも言われる利益になる。

それをジャイアンだけが独占してよいものか?
俺にだって少しぐらい分けてくれてもいいじゃないか。

それが正義というものだろう。

スネ夫は真剣にそう思っていた。

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昔の通貨は兌換紙幣(だかんしへい)であった。
ゴールドなどの貴金属と交換できることで価値が保証されていた。

しかしニクソンショック以来、ゴールドによる担保はなくなり、
通貨の価値は基本的に「人々の幻想や信認」で成り立っている。

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それは悪いことばかりではなかった。

通貨安・インフレは不況の特効薬だ。

通貨価値を下げることで名目資産価値を上げ、デフレを防ぐことができた。
輸出競争力を保つことが出来た。
海外からの投資を呼び込み、賃金・雇用などを確保することができた。

国民全体が痛みを分かち合い、経済を回してゆくためには非常に便利な道具だったのである。

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インフレによって通貨の価値を下げると、実質的に昔の債務をデフォルト(不履行)することができた。

仮にインフレを2%とすれば、毎年2%のペースで昔の借金を踏み倒すことができる。

これによって国が得をするだけでなく、債務者も得をした。

たとえば借金で家を買ったり、企業が設備投資をしても、年2%のペースで借金が減るのであれば返済は年々楽になる。

現金のまま持っていると価値が下がるので、みんな投資や消費に励む。それによって経済が拡大し、物質的な豊かさの原動力となった。

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借金の価値が高まるデフレほど恐ろしいものはない。

それは持たざる者からさらに収奪する地獄。

通貨の価値が少しだけ下がり続けるインフレのほうが、みんなハッピーだ。

だから政府は経済成長より少しだけ余分にカネを刷って、ゆるやかなインフレに誘導する。

そして貨幣鋳悪による「差益」は政府のものになる。

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基軸通貨になると、その「貨幣鋳悪差益」を自国以上の規模で得ることができる。仮に世界規模でやれば年間4兆円という試算もある。

スネ夫は思う。
そんなおいしい話があるのなら、自分がその席に座りたい。

しかしこのような経済的ハンデがあるのでは、いつまで経ってもジャイアンの覇権が終わらないではないか!

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もちろんスネ夫は、今の自分がジャイアンに代わる実力などないことをよくわかっている。

スネ夫の作るものは他人の真似ばかりで、安くないと売れない。

スネ夫のことを賞賛はしても、同じ家に入って暮らそうと思う者はいない。ジャイアンやのび太の家族になりたがる人間はいくらでもいるのに!

スネ夫が発行する通貨「スネーオ」は、家の中ですらニセ札がはびこっている。国内でも信用がないスネーオが基軸通貨になるはずがないというのが公平な見方であろう。

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確かに、まともに戦えばジャイアンにかなわない。

だがジャイアンの覇権を内外から切り崩し、自滅に誘い込む方法はある。

「人々の幻想」がしばしば「現実」を創り出す世界、特に金融においては「信用がある」というイメージは強力な武器となる。

信用があるところにカネは集まり、カネが集まれば信用ができる。そのスパイラルを作り出すことが大事だ。

逆に「信用がない」と思われた会社や国は、なかなか這い上がることができない。トランプの「大貧民ゲーム」のようなものだ。

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だからまず、ジャイアンの悪口を広めよう。

世界がうまく行かないのはジャイアンのせいだと吹き込んで、
彼らがケンカするように仕向けよう。

ジャイアンの信用をなくして仲間を離れさせ、
こちらの手下にしてしまおう。

あらゆる機会にジャイを拒否するように誘導し、
ジャイアンの覇権を根底から腐らせよう。

彼らが争いに疲れ果てたとき、俺にもチャンスが転がり込んでくる。

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えっ、そんな工作にひっかかる馬鹿はいないって?

せいぜい笑うがいいさ。
人間は自分が思うよりも洗脳されやすいものだ。

君が笑うこの夢物語を、いずれは現実にしてやるから。

(続く)

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