EUで英国が孤立? いえいえ、欧州合衆国入りは当然拒否
欧州サミットではEU27ヶ国が通貨統合(ユーロ)から財政統合に進む方向性を打ち出しました。英国だけがそれを拒否しましたが、これは歴史的な転換点になるかもしれません。
英国がバスに乗り遅れたとか、金融街「シティ」の利益を守ったなど小さな話ではなく、世界の勢力図がガラリと変わる可能性があるのです。
EUはもともと経済的なつながりを強めることで戦争の可能性を減らし、アメリカ・ソ連などの大国に対抗するために作られました。つまり
- 安全保障
- 経済統合
2つの側面があるのです。
そして潜在的にはドイツ封じ込めの意図もあったと思います。多国間の枠組みでドイツの行動を縛りながら、その経済力の恩恵をみなで受けようという構図です。
さて英国の立場であれば、地域の経済統合であるEUに参加しない手はありません。参加しなければ日米欧の大競争の中で埋没してしまうでしょう。
しかし通貨まで統合してユーロに参加するとなると、考えてしまいます。
なぜならば通貨発行権は国家主権の中で重要なもののひとつであり、それを放棄することは他の大きな組織に飲み込まれることを意味するからです。
今回の欧州ソブリン危機で露呈したように、通貨が同じで財政政策が違う状態は不便きわまりありません。通貨統合の行き着く先は財政統合であり、欧州合衆国への参加です。
そんなもの、英国が拒否するのは当然なのです。
日本に置き換えて考えてみましょう。
たとえばASEAN+3、 ASEAN+6、TPP何でも構いません。地域経済や貿易を活性化するための枠組みには参加すべきでしょう。国益を失わないように立ち回って、自由貿易のメリットを享受すべきです。
しかしそこから進んで、中国・韓国・ASEANなどと同じ通貨を使い、ゆくゆくは財布も一緒にしましょうと言い出したらどうなるでしょうか?
それはほぼ同じ国になるということで、単なる「近所づきあい」とはレベルが違います。
だからこそ多くの人々が、「ユーロ構想自体が無理なんじゃないか?」と言ってきたのです。
ラテン・ゲルマンなどが混ざるだけでも厄介なのに、トルコを入れようとしたときは「何を考えているのか」と私も思いました。
特に英国にとってみれば統一欧州はナポレオンやヒトラーの悪夢が再現しかねないわけで、願望と牽制を込めて「ユーロは成功しない。我々は参加しない」と距離を置いてきたのです。
今回、重要な点が2つあります。
ひとつはユーロがドイツ主導の統一欧州に向かう可能性が高まったこと。
これまでは戦争責任を問われ膝を屈してきたドイツですが、各国が競争的にドイツに媚びなければならなくなったことで主導権を取り戻すかもしれません。
そのあたりはフランスの手綱捌きもあると思いますが、パワーバランスとしてはドイツのほうに大きく傾き始めています。
もうひとつは、英国がまだ海洋国家として正気を保っていること。
統一欧州の可能性が高まったのであれば、同じ懸念を共有するロシアと手を組む必要が出てきます。そう遠くないうちに何らかのシグナルを発してくるでしょう。
ロシアほどの緊急性はありませんが、英国は日本にも接近してくるはずです。しかし今の日本政府がその意味を理解して対応できるかどうか、はなはだ疑問です。
正気を失って久しい日本を尻目に、世界は大きく動き始めています。
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もうひとつ忘れてはならないポイントとして今回、孤立した英国はEU内で最も親米的な国、逆に主導権を握ったドイツはイラク戦争以来、ロシアと接近している国であるという事があげられると思います。今後の統一欧州はアメリカよりもロシアを重視する国?になるかもしれません。英国がロシアに接近するのはまず間違いないでしょうが、ロシアがドイツよりも英国を優先する可能性は低いのではないでしょうか。
投稿: そら | 2012年1月 9日 (月) 20時30分
そら さん、
大陸国家同士は表面上仲良くしても、潜在的な敵であることは忘れないのではないでしょうか。
ナポレオン vs ロシア
ナチスドイツ vs ソ連
もちろんロシアがドイツにあからさまに敵対するわけではなく、
こっそり英露仏で三国協商を組んで備えるイメージです。
実はドイツ人は今のところ何も考えてなくて(笑)、
だらしないギリシャやラテンの連中を締め上げて無駄遣いをやめさせたいだけだと思います。
だけどやっぱり、ドイツが強くなると周辺国は緊張しますよね。
投稿: 逆張り投資家 | 2012年1月10日 (火) 16時41分