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« 会議は踊る。ドイツ人をブチギレさせながら | トップページ | 米中冷戦における日本(1):序論 »

2012年8月 1日 (水)

なでしこの「引き分け狙い」批判に反論する

2012年ロンドンオリンピック女子サッカーで、日本のなでしこが南アフリカ相手に0-0で引き分けグループ2位で予選を通過しました。

佐々木則夫監督は後半途中から引き分け狙いに切り替えて選手に指示を送ったそうです。

しかしこれに対し、なぜか批判する人がいます。いわく

  1. 期待して見ていた少年少女を落胆させた
  2. 相手に失礼である
  3. 選手のモチベーションに悪影響

などです。

 

 

おまえはいったい、何を言っているんだ?

 

私は「3位に落ちるリスクを最小限に抑えながら、いかにエレガントに2位になるか」ということに注目しながらゲームを見ていました。

試合日程・場所・相手との相性を見る限り、グループ2位が断然有利です。1位だと移動がキツイし、3位に落ちて米国が相手になったりしたらイヤすぎる(笑)。

金メダルのためには2位抜けを狙うべきで、 なでしこにはそうするだけの実力と勝ち点がありました。 文句が言いたいなら2位抜けを有利に設定した運営側に言うべきでしょう。

 

仮に最初から日本の調子が良くて得点できたのなら、それを止めてしまうと悪影響があります。 後から不自然に失点するわけにもいきません。 最初から引き分け狙いをあからさまにするのも興醒めですからね。しかし得点できずにいるうちに、引き分け狙いの環境がどんどん整ってきました。

そしてスウェーデンは終了間際に同点に追いつかれてます。おそらくあちらさんも同じことを考えていて、リードできたことを幸いに最後にちょいと罠を仕掛けてみたのでしょう。

あぶねー。うっかり先制してたらダチョウ倶楽部方式で1位にされるところだったぜ (笑) 。

 

日本  「俺、グループ1位は絶対イヤだからな!」

スウェ 「じゃあ、俺が1位になるよ」

カナダ 「いや、ここは俺が」

日本  「・・・じゃあ俺がなるよ」

ス・カ  「どうぞどうぞ」

 

佐々木監督が途中から「引き分け狙い」を指示したのはきわめて合理的です。

常に全力でアピールの機会を狙っている選手たちに対し、「先制点を入れるな」と明確な戦略を提示しました。これこそ監督稼業の真骨頂です。

しかもサブメンバーに五輪出場の経験をさせつつ、調整させることができました。中二日の鬼畜日程の中でベテラン選手も休憩を取れました。五輪前にちょっと調子が悪くそこから復調していることまで考えると、金メダル獲得に向けてベストの予選結果を得たと判断します。

 

 

翻って、それを批判している人はなんなんでしょうか?

 

 

  1. 期待して見ていた少年少女を落胆させた
     
    →否。「これぞグループリーグの戦い方!」と言うお手本です。目先の勝ち点より金メダルのほうが重要であることを忘れてはなりません。その戦略的思考を少年少女に教え込むべき。
     
  2. 相手に失礼である
     
    →否。 最終戦で戦っている相手は目の前の南アフリカだけではありません。ライバルのスウェーデンも同じ事を考えて罠を仕掛けてきています。
     
  3. 選手のモチベーションに悪影響 

    →否。 選手個々の欲望・野心をコントロールしてチーム全体の利益につなげるのが監督の役目です。

 

 

「いつでも全力主義者」は頭を使わずに楽ができます。

失敗したら「全力を出さなかった」選手や部下の責任にできるからです。

選手や部下は使い潰しの消耗品であり、自力でベストコンディションを保ち、良い結果を自分に「上納」しなければならない考えています。

 

彼らはまるで旧日本軍の「名参謀」のようです。

いつも精神論を振りかざし、チームを疲弊させ、無駄死にを強要します。

戦線を野放図に拡大して、休憩も補給もさせません。

集中砲火を浴びるだけの場所を「死守せよ」と無責任に命令し、支援もせず知らんぷりです。

 

役割分担や責任は丸投げ。

戦略やプロセスは無視。

「勝つことでしか穴埋めできない」「死ぬことでしか贖えない」と、結果を出すことを強要します。

結果オーライですべて許されるなら、そこに学びはありません。結果しか見ていないから、いつも表面だけを見てお気楽に批判ばかりしているのです。

 

ちょっと思い出してください。

あなたの部署は、鬱や自殺が多くないですか?

部下たちに「際限のない無駄な努力」や「仕事するふり」をさせていませんか?

上司は「怒鳴り散らすことが仕事」だと思っていませんか?

「業績が上がらないのは現場の努力不足」なんて言っちゃってませんか?

経営陣のリーダーシップや会社のシステム自体に問題はないのでしょうか?

 

テレビのワイドショーが「勝ちに行け!」「日本の勝利が見たい!」と煽るのはわかります。彼らはスポンサーのために試合を盛り上げなければならず、視聴率が所得に直結するからです。

しかし日本代表に優勝という結果をもたらし、サッカー大国への道を歩みたいのであれば、彼らとは利害が一致しないときがあることを我々は理解すべきです。

  1. 引き分けを狙え
  2. 疲れが溜まった選手を休ませろ
  3. 目先の勝ちにこだわるな
  4. 体調は決勝トーナメントに入ってからピークになるように持って行け

これらの話が当たり前にされるようになったとき、日本サッカーはもっと強くなることでしょう。男子ワールドカップ優勝も夢物語ではないと考えています。

 

日本のサッカー選手と育成システムは世界に追いつきつつあります。

指導者や審判はもう少し時間が必要です。

それに対しスポーツジャーナリズムは、 何周も何周も遅れてしまっています。 

 

しかし同時に厚みのある豊かな「サッカー文化」が、草の根的に広がりつつあることも強く感じています。

今回のケースはちょっと挑発的に書きましたが、異論・反論を歓迎します。これについて議論が深まることは日本のスポーツ全体にとって有益なことです。

 

チーム全体を楽にする佐々木監督の判断は、最後の最後に効いてくることでしょう。 

人事を尽くして天命を待て。

がんばれ、なでしこ!

 

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コメント

同じような戦略を取ろうとしてもスポーツの種類により大変、残念な事になるということがバドミントンでわかりました
サッカーについては、特に批判するような事は無いと思います
日本の報道機関が変な事を言うのはRPGに例えるならステータスに初期条件として×がついてるようなものだという認識です(知っていれば対処も可能ですからね)

丁 さん

バドミントンは凄かったですね。

「どちらかのサーブで始まるスポーツで」「絶対に負けなければいけないという制約条件」が揃うとああなってしまうんですな。

「プレイ中の時間消費が合法」であるサッカーがなんと温いことか(笑)。


しかしあれは決して無気力試合ではなく、悪名が後世に伝わることを承知で必死に金メダルを取りに行った結果だと思います。

今回は4組が失格になりましたが、将来同じような状況になったとき「巧妙に負けようとする人たち」の出現を止めることはできないでしょう。

恣意的な判断だけでなく「ポイントを多く取ったほうが後々有利」だとか「勝ち抜いた場合の相手を最初から固定されている(テニス方式)」などのシステムが必要と思います。


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