野合のメカニズム(2) 純粋なイデオロギーは野合できない
ある知人が共産党の選挙カーでこう言っているのを聞いたそうです。
「日本にカネはあるんです! どこにあるか? 大企業が内部留保としてしこたま溜め込んでいます! それを吐き出させれば増税は必要ありません!みんなが幸せになるんです!」
・・・さすが共産党。
言っていることには賛同できなくとも、思わず聞き惚れてしまう演説上手。
「おまえそれは財産権の侵害だろ」
「企業にとっては増税だから、みんな幸せじゃないがな」
「企業が喜んでカネを放出する政策を考えろよ」
いろいろツッコミたいところですが、そもそも私有財産を認めない共産党にしてみれば「民間の財産を奪って使う」という主張は一貫しています。
資本家は敵。だからいくら叩いても良い。
労働者は味方。だから何があっても保護すべき。
共産党は叩く敵も支持基盤もはっきりしていて、その対立構造の上に成り立っている政党なのです。
共産党には労働者層という確固とした支持基盤があります。機関紙「赤旗」は、新聞受難の現在にあってなお160万部以上を発行しています。
共産主義国の力が衰えても「労使の構造」いまだに変わらず、それゆえに共産党は一定の支持を持っているのです。
しかし共産党には、「日本維新の会」や「未来の党」と一緒になろうという話はありません。
あまりにも主張と支持基盤がクリアなので、どことも一緒になれないのです。
他の党と妥協して変にブレると、強固な支持基盤を根こそぎ失います。
受け入れるほうだって、自分の組織内に強固な一派を入れるのは怖い。だから政界がいくらゴタついても、合併の話など出てきません。
公明党しかり、社民党しかり。「みんなの党」もちょっとそう。
純粋なイデオロギーほど野合と無縁なのです。
逆に今、合従連衡を模索している人々は強いイデオロギーを持ちません。
基本的に「権力を取る」という利害で一致しているだけなのです。
彼らは社会党の旗色が悪くなれば民主党へ移ります (理想左派は社民党に残った)。
民主党の旗色が悪くなれば労働組合系は「民主」に残り、活動家は「維新」に移り、小沢派と理想派は「未来」へと渡り歩きます。
彼らは原発だのTPPだの目先のトピックを旗印にして、今回の選挙だけを乗り切ろうとします。
国家のグランドデザインを描く気もなければ、長く国を背負うつもりもありません。
極めて近視眼的な連携に見えます。
それに比べると、共産党の純粋さがかわいく思えてくるから不思議(笑)。
そりゃあ、俺は共産主義や脳みそお花畑は好きじゃないよ。
でも意見があれば聞くよ。
都合のいいときは利用させてもらうよ。
あんたらの調査は頼りになるときもあるしね。
しかし小選挙区制度のもとでは、そういった純粋な政党は不利です。
圧倒的な2大政党のプレゼンスの前に埋もれてしまうからです。
日本は元来、八百万の国です。
善悪二元論ではなく、もっと複雑で機微に富んだものです。
共産党が資本家を攻撃し、それに地主の息子が賛同するというカオスがまた素敵。
主張するのも賛同するのも自由だから、たった2つの党に押し込もうとするなよ。
純粋イデオロギーに政権取らすのは怖いけど、 権力志向の野合ショーばかりではなあ。
マキャベリストは好きなんだけど、国家観ゼロではなあ。
小選挙区で失ったものに、政治家や政党の「器」があると思います。
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コメント
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相変わらず愉快な記事を有り難うございます。
『多様性を認める』ことこそ
しなやかな民主主義を生む筈ですよね。
幼稚な権力迎合に思考停止した日本の政治家は
民度を示しているのか?
平和ボケなのか?
選挙システムの問題なのか?
真のリーダーシップをもった
リアリストが活躍できる土壌を準備したいものですね。
投稿: shimasyo | 2012年12月 6日 (木) 06時30分
shimasyoさん、返事遅くなってすみません!
今回の選挙結果は、日本復活の兆しだと思っています。何よりも有権者が賢くなりつつあることが心強いですね。あとはその人たちと連携して、自信を無くしている人たちをいかに勇気づけるかだと思います。
ただ小選挙区は怖いです。数年おきに若手がゴッソリ失業する業界で、人材が育つとは思えません。このあたりの構造問題を解決しつつ、政治家を育てていきましょう。
投稿: 逆張り投資家 | 2012年12月18日 (火) 15時58分