メディアが攪乱工作をしているようなので、尖閣問題を整理します。
今は以下の点だけ理解しておけば、「共同開発という名の収奪」に誘導されることはないでしょう。
- 領土問題に「歴史的に誰のものか」は関係ない
- 米国は自国覇権への挑戦であるとはっきり認識しており、日本の味方である
- 中国側は日本の譲歩による「領土問題化」そして「共同開発で施政権剥奪」を狙っている
1. 領土問題に「歴史的に誰のものか」は関係ない
中国は「歴史的に尖閣や琉球は中国のものだ。日本のものではない」と主張しています。
よくもそんな自爆ロジックを出して来るなと思うのですが、日本側がそれに対して有効な反論をしないので結果的に中国が有利に攻め立てているように見えます。
日本側にはいくらでも資料がありますから、史実としてそれを論破することは可能です。古文書や条約を調べ上げてネットでまとめてくれるような人々は、まさに日本を支える宝です。深く感謝するとともに同じ国に生まれたことを誇らしく思います。本当にありがとう。
ただ日本国内の意見を統一したり、国際世論に訴えるためには、主張はシンプルなほうが良いです。わざわざ相手が用意した土俵に乗り、「水掛け論の泥沼」で戦うことはありません。
日本がすべき主張、それは
尖閣諸島を含む沖縄は、1972年の沖縄返還でアメリカから返してもらった。
という「直近の強固な事実」を示すこと。そして
文句があるなら国際司法裁判所に訴えろ
という立場を貫くこと。この2つだけです。それ以上話し合うことも、考えることもありません。
考えてみてください。
あなたが住んでいるその家や土地は、もともと誰が発見したものですか?
100年前には誰が住んでいましたか?
それらの史実が、あなたが今そこに住んでいる権利に影響を与えますか?
誰かがいきなりあなたの家にやってきて、史実を根拠に「返せ」と言ったとして、あなたはそれに応じますか?
あなたはそいつを敷地から叩き出し、「裁判でも何でもやれ!」と怒鳴るでしょう。それで話は終わりです。
しかしここで対応を間違えると、話がこじれてきます。
たとえばあなたが相手を縁側に招いてお茶を出し、登記簿や古文書で調べた結果をもとに丁寧に反論したとします。そんなことをすれば相手は「こいつはとんだマヌケだ!俺の出まかせを真に受けてご丁寧に調べやがったぜ!」と喜びます。
あちら側は根拠のない思いつき。こちら側は史実に基づく反論。相手の出まかせをこちらの労力で延々と検証させられる罰ゲームが続くのです。
そんな作業はこちらが一方的に疲弊するだけであり、時間や脳みそを使わされるだけ損失になります。彼らはそれがわかっているので、次々に「史実らしきもの」を捏造して突きつけてくるのです。まんまと相手の土俵に乗って交渉や確認を始めた時点で、苦戦するのはわかりきっています。
あなたが相手の言い分をまともにとりあった上で庭への立ち入り(領海・領空侵犯)を許せば、相手は「やはりこの家は俺のものだ」との思いを強くするでしょう。
家屋侵入(尖閣上陸)や器物損壊(巡視船に突っ込む)に対し訴えもせずに釈放すれば、「あいつには弱みがあるに違いない。もっと強く押せば奪える」と解釈します。
今までの日本の丁寧な対応はいずれも、中国の侵略をエスカレートさせる危ない対応なのです。
さて「その土地はもともと俺のもの。だから返せ!」という話は、中国にとって危険なロジックです。
チベット、東トルキスタン、内モンゴル、満州・・・もともと誰のものでしたっけ?
チベットと中国の版図 よりいただきました
そのロジックだと、領土の半分をそれぞれの民族に返さなくてはなりませんよね。
むこうでアメリカさんやイギリスさんがすごい眼をして睨んでますけど、もう一度大声で言ってもらえませんか。
「もともと住んでいた人にその土地を返せ!」と。
ちょっと皮肉が過ぎましたが、「もともと誰の土地」という問題は中国にとっても他の先進国にとっても耳が痛い話のはずです。
中華思想は論理や整合性を気にしないので、矛盾に気づかなかったのかもしれません。あるいは日本のマスコミが支援するので、穴だらけの主張でも大丈夫だと思ったかもしれません。
しかしちゃんと反論されたら国家分裂につながりかねないのに、ずいぶん危ないロジックを持ち出して来たものだと思うのです。
「あれ、でもそうすると日本もまずいんじゃないの? 竹島や北方領土が実効支配されているのが直近の事実ですよね」
おっと、良いところに気が付きました。しかしご安心ください。
その「直近の事実」とは、国際法に基づくものでなくてはならないのです。
竹島は、サンフランシスコ(SF)講和条約に反する不法占拠です。だから裁判すれば日本にも勝つ見込みがあります。それで韓国は、国際司法裁判所への提訴を死ぬほどイヤがっています。
北方領土も同様です。日本はSF講和条約で「千島・樺太を放棄した」ことになっていますが、旧ソ連はその条約に調印していません。国際法上、どこまでがロシアのものだと確定しているわけではないのです(これについてはまた後で述べます)。
尖閣諸島は「40年前にアメリカから返してもらった」という事実があり、条約でそれは認められています。たとえば中国が国際司法裁判所に提訴したら、日本はそれを受けて立つことになっています。
国際法に基づいた「直近の事実」がある
それが尖閣と、竹島・北方領土との大きな違いです。
「そんなこと言うなら、中華人民共和国もSF講和条約に参加していない。したがって沖縄返還も無効!」
おやおや、こりゃまたでっかいブーメランを投げましたね。
そう、中華人民共和国はSF講和条約に参加していません。
なぜなら戦勝国はおろか、交戦国ですらないから。
戦勝国だったのはいま台湾にいる国民党。中国共産党は内戦で彼らを台湾に追い出し、ずっと後になってからその地位を奪っただけです。
中華人民共和国が台湾(中華民国)に成り代わって国連に参加したのが1971年(2758号決議)。日本が1956年。戦勝国クラブである国連参加が、なぜ敗戦国である日本よりも遅いのか説明していただけますか?
中国共産党は戦勝国でもなければ、抗日の英雄でもない。
日本人が鬼畜で戦勝国が英雄なら、中国共産党は英雄を追い出した悪魔。
SF講和条約を持ち出すと、そんな痛い事実を自分で暴露してしまうわけです。
その点をグリグリと指摘した上で、こう反論しましょう。
「沖縄返還に文句があるなら、日中国交回復の時点で文句を言うべき。それでも日中平和友好条約(1978年)に調印したってことは、沖縄返還を認めたってことですよね」
2. 米国は自国覇権への挑戦であるとはっきり認識している
危ない対応で侵略を招いている日本に対し、アメリカははっきり尖閣防衛の意思を示しています。つまり日本の味方ということです。
以前から「尖閣は日米安保の適用内」とフォローしてくれていましたが、先日ついに議会が「アメリカは日米安保に基づき尖閣防衛の義務がある」という法案を可決しました。
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尖閣諸島に安保適用 米で法案成立
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121222/k10014370531000.html
(NHK 12月22日 9時9分)
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(前略)アメリカ議会上院は21日、本会議を開き、議会下院が前の日に可決した2013会計年度の国防予算の大枠を定める国防権限法案を可決し、法案が成立しました。
この法案には、中国が領有権を主張している沖縄県の尖閣諸島を巡る条項が盛り込まれ、「アメリカは領有権に関して特定の立場をとらないが、尖閣諸島は日本の施政下にあり、第三国の一方的な行為によってこの認識が変わることはない」と明記されています。
そのうえで、「日本の施政権が及ぶ地域に対して、アメリカは日米安全保障条約の第5条に基づき、防衛の義務がある」として、尖閣諸島は、日米安全保障条約の適用範囲内であると指摘しています。
一方で、法案は「東シナ海の領有権問題は、それぞれが自制し、外交的に解決する必要がある」とも指摘していて、日本や中国などに対して、これ以上事態を悪化させないよう求めています。
今回の法案の内容は、アメリカ政府のこれまでの公式見解と同じですが、尖閣諸島を巡るアメリカの立場を議会としても改めて明確にすることで、中国をけん制するねらいがあるものとみられます。
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さすが国益に敏感なアメリカです。
尖閣を取られると台湾防衛が困難になりますし、深い海から潜水艦が太平洋に出てくることが可能になるので、アメリカの覇権を揺るがす大問題なのです。
おまけに中国側が「ハワイの領有権も主張できる」なんてヒラリー国務長官を挑発したもんだからさあ大変。その場で「国際司法裁判所に訴えてみてください」と撥ね付けられた上に、今回の決議に至りました。
ただし注意したいのは、あくまでも日本が防衛の意思を固めるのが先ということ。そして日本の施政権と日米安保を維持することが条件ということです。
アメリカにしても核保有の常任理事国と戦うわけですから、日本が戦わずに「アメリカさん守ってください」では通用しません。
アメリカだけでなく、同じ問題を抱える東南アジア諸国もこれ以上ないサポートをもらっています。各国から注目され期待されていることを自覚して行動したいものです。
3. 中国は「領土問題化」そして「共同開発で施政権剥奪」を狙っている
さて国際法の観点からは、尖閣は中国の領土ではない。
国際司法裁判所に行っても、勝つ見込みはゼロ。
でも島と領海は欲しいし、「中国のものを日本が奪った」と国民には説明してある。だから奪わないわけには行きません。そこで
国際法は関係ない。
警察(米国)も裁判所も関係ない。
もともと俺のものなのだから、自発的に返してもらう。
という形に持っていきたいのです。
その第一歩はまず、日本の漁船が近寄れなくすること。実は沖縄返還後、これは大成功しています。日本政府が尖閣に近づくことを許さなかったため、中国や台湾の漁船が我が物顔で操業していたのです。
次に日本に圧力をかけて、自発的に「献上」させること。毎日のように領海・領空を侵犯したり、ことあるごとに反日暴動や日本人社員拘束をして脅すのはそのためです。しかしこれは日本国民や米国の反発を招き、うまく行っていません。
そこで現在がんばっているのは日本に領土問題を認めさせることです。
係争地になれば人民解放軍を出すことが可能になります。また日本の施政権が怪しくなり、日米安保発動の可能性が低くなります。もともと何の問題もなかったことを問題化し、対等の立場であることを日本に認めさせるのですから丸儲けです。
最終的に中国側が落としどころとして狙っているのは「共同開発」でしょう。
これをやられると、自衛隊も米軍も出るタイミングが難しくなります。表面的には経済活動となっており、軍事占領されているわけではないからです。
しかし「東シナ海ガス田共同開発」が一方的な収奪で終わっていることを見ればわかるように、中国が本当に資源を共有化したり、一緒に開発するわけではありません。日本人を脅して近づけないようにし、米軍の介入を防ぎながら実質的に施政権を奪ってしまうのが目的です。
次にやることは、「南鳥島・沖ノ鳥島はもともと中国の領土だ!」と争点を変えることです。日本側が「中国を刺激するな」「もともと歴史的には、国際法としては・・・」などと受け身に回っている間に、尖閣のことは報道させないようにして既成事実化します。
何十年か経って中国が尖閣に基地を作り、軍人を常駐させても、慣れてしまった日本人は怒りもしないでしょう。竹島に大統領が上陸し、天皇陛下を馬鹿にされ、親書を突き返してもヘラヘラ笑って支援しようとするのですから舐められて当然です。「中国を刺激するな。沖ノ鳥島さえ渡せば平和になる。どうせ無人だし誰も困らない」みたいなどこかで聞いたロジックで、次々に領土領海EEZを献上することになります。
そんなわけで中国側は日本国内のシンパに命令し、「領土問題化」そして「共同開発」へと持っていこうと頑張っています。それさえ受け入れたら日本にまた平穏な日々が戻ってくるのだと、甘い言葉で誘っています。
しかし決して惑わされてはいけません。それは解決への道ではなく、侵略をさらに加速させる亡国への道です。
こうして考えると、もっとも厄介な敵は日本国内の「自称平和主義者」ということになると思います。
彼らは「平和を守れ」「周辺国を刺激するな」「日本が支援しろ、譲歩しろ」と言いながら、日本侵略をサポートします。相手の土俵に上がって争点をずらし、結論を誘導します。
国際法の議論を避けて戦争被害だの歴史認識だのに話を持って行く人は、侵略に加担していると考えて差し支えありません。
「お互いに譲歩」「妥協点を見つける」という言葉にも要注意です。日本は言いがかりをつけられているだけで、何も譲歩する理由はありません。それを許せば次は南鳥島・沖の鳥島・沖縄と侵略は加速します。
「同じレベルに落ちるな」「民度の高さを見せつけろ」もそうです。軍事には軍事で対抗するしかありません。領海侵犯は撃沈が基本です。それを否定するのは「日本人は抵抗せず死ね」と言っているのと同じことです。
争いそのものを「レベルが低い」と軽蔑すれば、自分だけ上に立てたようで気分が良いかもしれません。しかし強盗も警官も一緒にして「暴力は野蛮」と見下すような性格では、あなたを守ろうと思う人はどんどん減って行くでしょう。今の日本の危機は政治家が靖国参拝を忌避し、国を守ろうとした人々を否定したときから続いているのです。
(続く)
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