TPPの怪しい手口 - サインした後でないと中身を読ませてもらえない契約書
第二次安倍内閣は、ここまでほぼ満点の出来です。
特に外交では期待を上回る成果を出しています。
私の中で安倍さんはすでに「歴史に残る名宰相」が確定し、ビスマルク・タレーラン・メッテルニヒあたりと比較され始めています(笑)。おそらく同じ名宰相であるプーチン氏と、歴史的な合意にこぎつけるに違いありません。
しかしここにきて、いくつか意見を言いたくなることが起こりました。
それは、
- 中国への環境支援
- TPPへの参加
です。
中国への環境支援は全く逆効果で、むしろ武力侵攻を招きかねないとすでに述べました。
そこで今回はTPPについて述べたいと思います。
最初にTPPの話を聞いたとき、「何だその押し売りは」と不愉快になりました。
売り込み方がまるっきり、詐欺商品と同じだったからです。
- TPPに乗り遅れるな!
- チャンスは今だけ。後からは入れません
- とにかく関税や障壁を撤廃します。国内法を優越する条約です
- 交渉に参加したら必ず入らなければなりません。取り消しは不可能。
- でも交渉に参加するまで内容は見せられません。
- 後から参加する国は、ルール作りに参加できません
- 賛成しない人は経済をわかっていない馬鹿
サインした後でないと中身を読ませてもらえない契約書なんて、1秒も考える価値ありません。
絵にかいたような詐欺師の手口です。
はいはい。ではそのTPPは日本にとってどんなメリットがあるんですか?説明できないなら詐欺と同じですよ。
反対派が具体的な例(NAFTAや米韓FTA)を挙げながらISD条項などの危険性を指摘しているのに対し、賛成派はずっと「賛成しないおまえは馬鹿」とけなすだけでした。
まるっきりどこぞの売国道の人たちと同じ手口で、日本に不利な条約を急いで結ぼうとしているようにしか見えません。
世論調査では慎重な人が大部分で、「やはり大勢は反対なんだな」と感じていたところ、次にはこう言い出しました。
- TPPは対中包囲網。アメリカの保護を受けたいなら参加しないという選択肢はない
おやおや、最初はそんなこと全く言ってませんでしたよね。ごり押しが通じないと見て作戦変更ですか?
オバマさんは「TPPと安全保障は無関係」と言ってるんですが。
いつもは「21世紀は中国の時代!」「中国に進出しない企業は滅ぶ」「もっと技術を提供して投資をしよう」と煽っている人たちが、同じ口でいきなり「対中包囲網だから参加しなくてはならない」なんて言い出すんですよ。ますます怪しさ倍増じゃないですか。
まさかそう言っておけば親米派が黙るとでも思ってるんですかね。我々は国益を考えて親米になっているだけで、親米のためなら国を売る人間じゃありませんよ。
そんな怪しいものは考えるだけ無駄と思い、ブログにも書かずに無視していました。
しかし安倍首相は訪米で共同声明を出し、参加の方向で進み始めました。
おいおい、本当にやるのかよ。
TPPはうまくやれば、日本にとって悪い話ではないのかもしれません。
というのも、もともとTPPは2005年6月3日にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国間で調印して発足しました。
その意図は「小国同士の戦略的提携によってマーケットにおけるプレゼンスを上げること」でした。それぞれが孤立していても戦えないから、規制や関税を低くしてあたかも一つの国のようになろう、ということです。
しかし2010年3月からアメリカ、オーストラリアなどを加えて拡大交渉が始まります。
あれあれえ?
少年野球にメジャーリーガーが乱入して大暴れみたいな鬼畜の所業ですかあ???
それなら俺も少しはおいしい思いができるよね、と考える日本企業があってもおかしくありません。
ここで用語を整理します。
- FTA(自由貿易協定:Free Trade Agreement)
物品の関税、その他の制限的な通商規則、サービス貿易等の障壁など、通商上の障壁を取り除く自由貿易地域の結成を目的とした、2国間以上の国際協定
- EPA(経済連携協定:Economic Partnership Agreement)
FTAを結んだ国が、さらに経済取引の円滑化、経済制度の調和、および、サービス・投資・電子商取引などのさまざまな経済領域での連携強化・協力の促進などをも含めた条約
- TPP(環太平洋経済連携協定:Trans-Pacific Partnership)
環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的なEPA。 自由競争の妨げとなる関税や非関税障壁を撤廃し、経済的な国境をなくすことを柱としている
つまり経済交流を活発化させる協定がFTA、それをさらに条約として強めたものがEPA、そして環太平洋の国に限って積極的にEPAを広げようというのがTPPです。
TPPの恐ろしいところは、障壁の完全撤廃を基本としていることです。
「自由貿易原理主義」と言っても良いでしょう。
私も経済的な国境は低いほうが良いとは思います。
しかし性急にことを進めると、一部の人や企業がウハウハ儲かっても、その裏側に悲惨な思いをする人々が多数出ることは容易に想像できます。
安い輸入品が手に入るかもしれませんが、多くの人が職や所得を失ってそれを買う力を失うなら本末転倒です。中間層に打撃を与えると治安が悪くなり、社会の健全性が失われてしまいます。
経済統合は数世代かけて適応できる人材を育てながらやるべき話だと思います。数年で大量の失業者を出して進めることではありません。
そもそも、関税自主権を放棄することに対してはよくよく慎重になるべきです。
思い出してみてください。
日本が開国時に不平等条約を結ばされて関税自主権を失った後、それを取り返すのにどれほど苦労したかを。
日清・日露戦争に勝って欧米諸国に力を認めさせ、血を流しながらその主権を取り返したのです。
それをろくすっぽ議論もせずに「バスに乗り遅れるな!」と捨て去るなんて、馬鹿にするのもほどほどにしてもらいたい。それを上回るメリットをちゃんと説明するべきです。
運用が公平に行われるのであれば日本にとっても損な話ではないのかもしれません。しかし
- どうしてもアメリカ有利の制度になること
- 失業どころか、業界ごと消滅する人々がいること
などを隠したまま、詐欺商品を押し売りするようなやり方は気に入りませんね。
大事なことなので、ちゃんと議論を尽くせば良いのではないでしょうか。それでも結論が出ないのであれば参加は見送るべきです。
しかし私が不思議なのは、既得権を失いそうな業界の人までTPPを推進していることです。
たとえば広告業界で言えば、アメリカでは同業種内で複数企業の広告を掛け持ちすることが禁止されているそうです。日本の広告代理店は強い力を持っていますが、アメリカ流のルールが押し付けられたら独占的な力を失う可能性があります。
国際競争力のある企業がTPPに賛同するのは良くわかります。
しかしどう見ても日本村のルールでおいしい思いをしている人たちが賛成しているのは解せません。多数決を取ればどの国でも反対票が圧倒するはずなのです。
TPPが通れば、次に焼かれるのは自分だとわかってるんだろうか。
よくわからんまま雰囲気に流されて賛成してるだけだったりして。
(終)
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