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2016年7月20日 (水)

「逆トルコ革命」で世界は大混乱へ (1) トルコを失ったオバマ政権

この記事は会員さん向けメルマガ
 
投資戦略アップデート(20160720)オバマ政権の大失態。「逆トルコ革命」で世界は大混乱へ
 
の公共性が高いと判断し、加筆修正の上で公開したものです
 
 
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トルコ軍のクーデター失敗で、市場は落ち着きを取り戻しました。
 
短期的にはリスクが減ったように見えます。
 
しかし長期的にはアメリカの国益を大きく損ない、欧州や中東を不安定化させるでしょう。
 
「トルコを失う」ことで、オバマ政権の失態リストに新たな1ページが加わりました。
 
さらにそれだけでは済まない、大混乱の序幕のように思えます。
 
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2016年7月15日夜(日本時間16日未明)、トルコでクーデターというニュースが流れたとき
 
私は反射的に「世俗主義への回帰。背後には米国」と考えました。
 
過去に何度か、イスラム色が強くなったときにトルコ軍が介入したことがあったからです。
 
そのように、一部会員さんにもメールしました。
 
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トルコのエルドアン大統領は穏健派を放逐して独裁色を強め、急速にイスラム化していました。
 
また昨年(2015年11月)のロシア機撃墜以降、ロシアに急接近していました。
 
それらが米国の逆鱗に触れたのではないか、と考えたのです。
 
トルコ軍によるクーデターによって、ケマルパシャの「トルコ革命」以来の伝統である「世俗主義」に戻すのかと思っていました。
 
しかしクーデターがすぐ失敗したのを見て、大いに驚きました。
 
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トルコでは今回の事件で、「米国が黒幕だ!」と非難している人々がいます。
 
そして米国側は、それを否定しています。
 
US government behind Turkish coup attempt, Turkish minister says
 
Turkey coup: Tensions between US and Erdogan administration rise after failed power grab
 
トルコのクーデター未遂、米ケリー長官「米関与説は完全な誤り」
 
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しかし米オバマ大統領が早い段階でエルドアン政権を支持したことを見ると、
本当に米国は関与していなかったのかもしれないと思ってしまいます。
 
オバマ米大統領「トルコの現政府支持」=クーデターの動きけん制
 
もちろんCIAなどがオバマに知らせなかった、ということもあり得ます。
 
仮に米国が黒幕であったとしても、基本を外した稚拙なクーデターであったことは否めません。
 
トルコ一部軍人の暴走なのかどうか、判断に迷うところです。
 
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それに対し、エルドアン大統領は手際よくトルコ内米軍基地への電力供給をストップしました。
 
すばやく裁判官や軍人を処分しました。
 
稚拙さが目立つクーデター側よりも、用意周到な感じです。
 
これまでの歴史を鑑みて、事前に準備してあったのでしょう。
 
トルコの米空軍基地 停電
NATO諸国の航空機も置かれているトルコ軍のインジルリク空軍基地は、現地当局により、封鎖され、電気の供給も止められている。
 
トルコ政府、裁判官2745人の職権一時停止
 
トルコ クーデター未遂 捜査当局が軍幹部クラスも追及
 
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これでエルドアン大統領は、反対派を粛正する大義名分を得ました。
 
今後はますます独裁的になり、イスラム色が強くなるでしょう。
 
EUに参加するどころではありません。
 
NATOから脱退したり、ロシアと同盟を組むこともありえます。
 
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エルドアン大統領から見ると、目下の敵対勢力は
 
「宗教色の強いギュレン氏支持者(ギュレニスト)」
 
「世俗主義者(軍人など)」
 
となっているようです。
 
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ギュレン氏はイスラーム道徳をベースにする市民運動の指導者です。
 
かつてはエルドアン大統領の支持母体となり共闘していましたが、方向性の違いから袂を分かちました。
 
独裁者はそのような人物の影響力を恐れ、粛清したがる傾向があります。
 
ギュレン氏は今では米国に亡命しており、現実的な脅威とはなりません。
 
エルドアン大統領はこれを口実に、トルコ国内の反対者や世俗主義の軍人を排除するつもりなのでしょう。
 
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(参考)
アッという間に市民に制圧されたトルコ・クーデターの隠された意味 軍2839人逮捕、判事2745人解雇
 
トルコのクーデターはなぜ失敗したのか
 
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この事件で、米国が失ったものは計り知れません。
 
米軍基地がトルコから追い出されたら、アジアと欧州をつなぐキーストーンが失われます。
 
ダーイシュ(ISIL、自称イスラム国)掃討作戦や、シリア難民にも影響が出るでしょう。
 
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エルドアン大統領の背後には、ロシアの影が見えます。
 
トルコから米国の影響を排除できれば、ロシアにとって莫大な収穫です。
 
ロシア黒海艦隊はクリミアから黒海を経て、地中海へと出る水路を確保できます。
 
この事件の前に「プーチン大統領の姿がしばらく見えない」という噂が流れたことと
無関係ではないかもしれません。
 
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しかしロシア側も、手放しで喜んで良いものでしょうか。
 
「イラン・イスラム革命」と同じことが、これからトルコで起きる可能性は大きいです。
 
今はエルドアン大統領を支援しているロシアも、そのうち手を焼くようになるかもしれません。
 
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米国のオバマ大統領は、その任期中に国益を失い続けました。
 
「市民が殺されている!」と報道されると、事実や背景を確認せず反射的にその相手を潰してしまうことも大きな原因です。
 
敵味方を取り違えて肩入れしてしまうため、国益を失ったことにすら気付きません。
 
米国が大義名分として使ってきた「民主化」の御旗を、
神聖不可侵なものとして心から信じてしまっているのです。
 
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オバマ大統領は、同盟国の国益や安全にはさらに鈍感です。
 
そのため多くの仲間が去ってゆきました。
 
「アラブの春」ではエジプトの親米ムバラクや、リビアの親米カダフィを潰しました。
 
それを見たサウジアラビアはロシアに接近し、外交力や軍事力を独自展開するようになりました。
 
またオバマ大統領はイランに歩み寄るなどして、イスラエルの離反を招きました。
 
シリアではアサド大統領を困らせるためダーイシュ(自称イスラム国)をわざと延命させ、
世界にテロの種を撒きました。
 
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英国との関係もおかしくなりました。
 
英国から贈られたチャーチルの胸像を執務室から放り出し、倉庫に入れてしまいました。
 
オバマファミリーが英国皇室に対して慣れ慣れしすぎることも不評でした。
 
それらがすべての理由ではありませんが、英国は中国に接近するようになりました。
 
英独仏伊が米国の制止を振り切ってAIIBに参加したのには、いくつもの背景があるのです。
 
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オバマ大統領の時代に、アジアでも緊張が高まりました。
 
北朝鮮の核武装を許しました。
 
中国には南シナ海の埋め立てを許しました。
 
中国は日本の尖閣諸島に連日、領海侵犯するようになりました。
 
中国は沖縄(尖閣)・台湾などの「第一列島線」の突破を確信しました。
 
「第二列島線」の小笠原でサンゴを密猟し、日本の施政権を揺さぶりました。
 
今では日本の沖ノ鳥島の領有権に文句をつけ、奪う気マンマンです。
 
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今回の「トルコ・クーデター未遂事件」は大きなターニングポイントです。
 
これから起こることは「逆トルコ革命」であり、「トルコにおけるイラン・イスラム革命」となるでしょう。
 
今はクーデター失敗を喜んでいる人々も、
ずっと後になってこれが独裁加速のきっかけであったことに気付くでしょう。
 
「民主主義の勝利」と喧伝される裏側で、「アラブの春」と同じような火種が撒かれているのです。
 
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米国のトルコ喪失によって、「オバマの大失態リスト」に大きな一項目が追加されました。
 
そしてオバマ大統領の任期はあと半年。
 
この「ボーナスステージ」を最大限に活用するため、各国ともなりふりかまわず他国の国土や権益を奪いに来るでしょう。
 
大混乱はまだ始まったばかりです。

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