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2006年4月 1日 (土)

IT企業が買収を続ける理由(2)

そのようなメカニズムを理解していただいたところで、さらにディープな領域に突っ込みましょう(笑)。

割安に放置された会社の経営者には、買収されてクビになる恐怖があります。
一方で、超割高に評価された会社の経営者には、そこから墜落する恐怖があります。

どっちも怖いのですが、後者は投資家の期待に報いるか、ソフトランディングさせることができれば助かります。だからほとんどの会社ではIR活動に力を入れ、株価が不当に安い状態にならないように気を使うわけです。

なんでこんなことになるかというと、株価は一種の通貨なので、その価値が高くなったときは他の割安なものと交換するチャンスだからです。あなただって、円高のときにさんざん外国通貨を買ったり、ゴールド買ったりしたでしょう。それと同じです。

 

そうであれば、ずる賢い経営者はこう考えます。

「ウソでも何でもいいから投資家に株を高く評価させれば、あとはやりたい放題で買収できるじゃないか。実体があとで追いつくようにすればいいし、結果がうまく行けば投資家を騙したことにはならない」

こうして、粉飾決算が始まるわけです。

カラクリ3の第五章でも述べましたが、投資家の幻想によって株価が高騰するのであれば、それを使ってまともな会社を買収すればよいのです。まるで巧妙なニセ札を作って、こっそり本物のお札と交換してしまうようなトリックです。

もともとビジネスの半分はハッタリで出来ているようなもんですから、経営者が大き目の風呂敷を拡げたところで怒るようなことでもありません。しかし中には最初から投資家のカネをふんだくるつもりで粉飾・虚言を駆使する経営者もいます。投資家は知性をフル活用して、財産を守らねばならないのです。

一方、粉飾をするでもなく偶然にそういったチャンスを手にした経営者は、何とかその期待を現実にしようと考えます。

「よくわからんけどラッキー。だけど期待がはげると反動が怖いから、割安な会社の株と交換しておこうっと」

かわいそうなのは買収されるほうの会社です。単に自社株が割安だったからという理由で、実体の薄い霞のような相手の株と交換させられてしまうのです。全然関係のない会社であれば経営者は留まることもできるでしょうが、同業者であれば確実に自分のクビが飛びます。

そのような悲劇はよくあるのですが、国内の企業を例にするとブッ殺されそうなのでここでは

「超ド高値のAOL株と交換させられた
タイムワーナー状態」

と命名することにします(笑)。

 

では、こういった「超割高企業の株式交換による買収」によって、トクをする人と損をする人を整理してみましょう。

 

1. 買収側の超割高企業の株主・・・・・・買った価格による

割高になる前から保有していたのであれば、経営者のその後の働きによって今の株価が正当化されることもあるでしょう。しかし、いいかげん高くなってから買ったとしたら、良くて現状維持、悪くて暴落です。

 

2. 買収される側の株主・・・・・・短期的にはトク。長期は損。

買収されることになれば普通はプレミアムがつくので、短期的に株価は上がるはずです。ただしその対価が現金ではなく超割高企業の株だとしたら、いつまでも安心していられません。霞が消えてなくなったとき、その企業は自らの価値をタダ同然で売り渡したことになります。

 

3. 買収側の超割高企業の経営者・・・・・・望まぬリスクを抱えてしまったが、望みはある

前述のように、M&Aによって期待と現実をすばやくマッチングさせ、ソフトランディングすることが可能です。しかしそれに失敗すると、勝手な投資家たちからの非難を一身に浴びることになります。

 

4. 買収される側の経営者・・・・・・良いことありまっしぇん

前述のように実体の薄い霞のような相手の株と交換させられ、その尻拭いが大変です。全然関係のない会社であれば経営者は留まることもできるでしょうが、同業者であれば確実に自分のクビが飛びます。「投資家に自社の価値を理解させる努力を怠った」という落ち度はあるかもしれませんが、不特定多数の投資家に完全な理解を求めることがビジネスの本筋でしょうか? 個人的にはこういう会社の株をあらかじめしこたま買って、応援したいと思いますがね。それが投資のプロとしての責務だと思いますし。

 

いずれにしても投資家としては「割高な株を買うな」という話です。逆に「良い株を割安なまま放置させるな」ということも言えますかね。

大型買収をするからとか、株式分割をするからという理由で株を買っていれば良いカモになります。特に新株発行を伴う買収は、経営者自身が自社株の割高さを自覚しているひとつの証拠です。

テレビ局の株が欲しいんだったら、
IT企業を通さずに自分で直接買えよ

ということですな(笑)。

 

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2006年3月31日 (金)

IT企業が買収を続ける理由

投資ブログですから、最初のネタとして「IT企業が買収を続ける理由」について書いてみましょうか。

ここ数年は日本でもM&Aが活発化しておりますが、中でもいわゆる「IT企業」が派手に買収合戦を演じ、大きく成長してきました。ソフトバンク・楽天・ライブドア・USENなどが千億円単位の資金調達をして、大小さまざまな会社を飲み込んでいます。

中には「時価総額経営」なるスローガンを標榜し、時価総額を最大化することを経営目標とする会社もありました。ライブドアの堀江社長は捕まってしまいましたが、M&Aによって業績を伸ばしてゆく(成長を買う)というビジネスモデルは日本でも確立したように思います。

では、なぜ彼らは買収を繰り返すのでしょうか?

カネのため? 
名誉のため? 
自己実現のため?

それらはもちろんあるでしょう。しかしそれに加えるとしたら、「株価が割高だからしかたなく」という要素もあるかもしれません。簡単に言うと、自分の本業よりも大きな資金が会社に流れ込むと、本業以外のビジネスにも手を出さざるをえなくなるのです。

ちょっと想像してみてください。

あなたはあるIT企業の社長だったとします。あなたが狙っているビジネスは、その市場規模から見て100億円の資本が必要だと考えました。あなたは株式を公開し、首尾よく必要な100億円を手にしました。ところがそのビジネスモデルが市場に受け、社長であるあなたは人気者になり、会社の時価総額が1000億円に達しました。さて、ここであなたには2つの選択肢があります。

1. 株価は放っておいて、本業に専念する

この選択肢は厳しいです。なぜなら本業は100億円の資本しか必要としないので、たとえば益利回りを10%(=PER10倍)と考えるなら10億円の利益しか生まない市場ということになります。本業から逸脱しないのであれば利益はそこで頭打ちになります。現在の市場は利益の100倍(=益利回り1%=PER100倍)で評価していますが、いずれは適正な価格に落ち着くでしょう。つまり、株価は10分の1近くに下落するということです。

あなたは最初の計画通り、自分が狙ったビジネスを全うしただけです。それなのに投資家のほうが勝手に期待をして、株価を10倍に吊り上げてしまいました。そんなのがどうなろうと、本当は知ったこっちゃありません。しかし株価が10分の1に暴落すれば、投資家はあなたを非難するでしょう。そう、「期待に応えられない無能な経営者」のレッテルを貼られてしまうのです。そこであなたは考えます。

2. 実体のない株価を、実体のあるものにする

期待するのは投資家の勝手だが、それに応えないとえらいめにあいそうだ。やれやれ、上場がこんなに大変なものだとは思わなかったと。しかしボヤいてばかりでもしょうがないので、この割高な株価を何とか正当化できるような利益を上げようとします。

本業には100億円で十分です。放っておけば時価総額はそこに戻ってしまうでしょう。では、割高な値段で株を発行して(=10倍の値段で売って)、その資金で実体のある他の会社を買えばいいじゃないかと。

関係者には失礼に聞こえるかもしれませんが、割高な株価というのは「霞(かすみ)」のようなものです(by服部暢達先生)。つまり利益に対して、希薄化された状態にあります。いずれは消えてしまう霞でも、その前に何かと交換してしまえば完全には消えてなくなりません。そう、霞が消えてしまう前に、もっと実体のある水や氷と交換してしまおうというのが、企業買収のひとつの動機なのです。

こういった現象を考えるひとつのテクニックとして、「会社を投信に置き換えてみる」という方法があります。投信はアセット側(資産側)に他の会社のエクイティ(自己資本)が入っただけの会社ですから、構造としては会社と同じと考えることができます。「会社型投信」なんて言葉もあるぐらいですから。(参照 ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金篇

それを使ってこの現象を考えると、こう説明することができます。

あなたは超小型株の運用者で、100億円の資金を預かっていました。しかしあまりにもパフォーマンスが良かったので、顧客が資金をどんどん追加し、預かり資産が1000億円にまで増えてしまいました。ヘッジファンドのように資金に上限を設定して断ることができるのであれば、100億円の小さなファンドのままでいてパフォーマンスを落とすこともないでしょう。しかし断ることができないまま資金が集まってしまったので、慣れない中大型株にも手を出さざるをえなくなってしまいました。さて、何を買えばよいものやら???

このように、超割高な評価をされたIT企業は、市場に存在する投資機会に比べてあまりにも資金が集まりすぎたファンドと同じ悩みを抱えることになります。本業以外の分野はやったこともないし、よく知らないので本当はやりたくない。しかし顧客の期待はそれを許さず、これまでと同じパフォーマンスを期待している。これはもう恐怖以外の何者でもありません。勝手に高いところに持ち上げられてしまうので、そこから落ちて大怪我しないようにするだけで精一杯なのです。

つまり、

「株価が割高な企業の経営者は、恐怖感にかられて買収に走ることがある」

ということです。

何に対する恐怖かと言えば、「株価」そして「経営者としての自分の評価」が暴落することに対する恐怖です。なんとか手を打たなければ引責辞任だとか、訴訟といったトラブルに発展する可能性があります。

もちろん株価が不当に安く放置されていて買収のターゲットにされるほうも怖いのですが、メチャクチャに高く評価された企業の経営者もそれとはまた違った恐怖を感じているはずです。それが時として、シナジーが疑問視される業種への参入や、周囲からは強引に見える買収へと経営者を駆り立てるのです。

(続く)

 

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