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2007年12月 5日 (水)

制約条件とゲームの変質

野球の星野ジャパンが見事、北京オリンピック出場を決めましたね!まずは「おめでとう」と言いたいです。

自分は日曜の韓国戦を見て、月曜の台湾戦は最後だけ見ました。台湾戦は終わってみれば日本の圧勝で、メディアは「用意周到な星野ジャパンの完勝」と喜んでいました。

 

しかし実はこのゲーム、勝てば良いという単純なシロモノではありませんでした。なぜなら「当該チーム同士が直接対決で決められない場合、次は失点率で決める」という少し変わったルールが採用されていたからです。

放映したテレビ局は、「北京への切符は1枚だけ」と煽っていましたが、それは違います。これに負けても世界最終予選の上位3位までに入れば、出場権を得られるのです。

「失点率」と「最終予選が残っている」。このふたつの条件が、日本対台湾の野球を複雑なものにしてしまいます。

日本が勝てば文句なく1位で勝ち抜けですが、負けても2失点までなら日本が失点率の差で勝つことになります。日本のほうは4失点以上で負けると韓国が失点率で上回るため、勝つしかなくなります。

日本0-1台湾  日本
日本0-2台湾  台湾(日本との直接対決勝者)
日本0-3台湾  台湾 4点以上とっても同じ結果
日本1-2台湾  日本
日本1-3台湾  完全な3すくみにて不明(自責点率など)
日本2-3台湾  日本(韓国との直接対決勝者)
日本1-4台湾  韓国(台湾との直接対決勝者)

 

さて、これらの状況から考えると、複雑なゲーム事情が浮かび上がります。

  1. 日本としては、2失点までなら負けても良い。
    極端に言えば1-0でリードした9回裏にランナーが2人出たら、ホームランを打たれるわけにはいかない。ということは3連続四球でも、3連続ボークでもいいから、バットを降らせることなく強制的に2点を取らせて負けなければならない。
  2. 台湾としては、日本に2点以上取られて4点以上取って勝つと韓国が1位になってしまう。すると最終予選に日本が出てくることになり、3つの枠が実質2つに減ってしまう。だから日本が0点なら2点以上、日本が1点なら3点取って勝つしかない。

台湾にとっては針の穴を通すような厳しい制約条件です。日本が2点以上取った時点で台湾の勝ちぬけがなくなるので、台湾としては厄介な日本と最終予選で戦うより、韓国と戦いたいと思うはずです。つまり日本が2点取った時点で、お互いに日本に勝たせる以外の選択肢はなくなるということ。

こうして考えると、星野ジャパンが満塁スクイズで2点目をもぎ取りに行ったことが理解できるでしょう。その時点でゲームは終わり、あとはいかにエレガントかつさりげなく日本に勝たせるかという形作りに入るわけです。

 

こういった出来レースのような勝負を見ると、「スポーツマンらしくない!最後までちゃんと戦えよ!」と言う人がいます。

確かに興行主・メディア・視聴者にとっては、勝負の決まったスポーツを見るほど苦痛なことはないでしょう。しかし一方で、戦う必要がなくなったアスリートに怪我のリスクを背負わせてまで戦わせるというのも残酷な話です。

こうして台湾が負けるしかなくなった原因は、勝ち抜けのルールが最後まで戦うように設計されていなかったということに尽きます。

 

3連勝はすばらしい。日本には実力もある。

しかしだからといって、台湾に大差で勝ったことを当然と考えるのは能天気すぎるでしょう。2点取られた時点で、彼ら自身の都合により負けるしかなくなったわけですから。

そういった制約条件によるゲームの変質に気付かないうちは、スポーツでも投資でも勝ち続けることは難しいでしょうね。

 

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