年末年始にかけて、テレビを見る機会が増えました。
今回は環境をテーマにした番組が多かったですね。温暖化、水不足、病気の蔓延・・・人類共通の問題にどうやって立ち向かうのかという意識の高まりでしょうか。
それらの意識はすばらしいものですし全く反対する気はないんですが、疑問に思っていることがいくつかあります。
まずひとつには、「どうして他国の環境問題を解決するのに、日本がカネを払わなければならないのか?」という疑問です。
他国が環境を守るために日本から技術を買うのは問題ありません。多少の値引きにも応じましょう。しかし日本から「お願いしますよお」とカネを払ってしまったら国際競争を不公正にして日本が弱ってゆくだけでなく、環境問題の解決を遅らせるのではないかと思うからです。
今日の日経新聞でも、日本から途上国に1兆円の支援をするとブチ上げられました。
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日本経済新聞(2008/01/10) 温暖化対策、途上国支援に1兆円・5年間で、首相が表明へ
http://eco.nikkei.co.jp/news/article.aspx?id=2008010910209n1
地球温暖化防止に向けて福田康夫首相が近く打ち出す途上国への資金援助策が9日、明らかになった。温暖化ガス削減や代替エネルギー普及などの目的別に、5年間で総額100億ドル(約1兆1000億円)を無償資金協力や円借款などで供与するのが柱。2012年で終わる京都議定書以降の枠組みづくりを目指し、温暖化対策が遅れている途上国が参加しやすい環境を整える狙いだ。
首相はこうした方針を今月、通常国会冒頭の施政方針演説や、出席で調整中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での演説で表明する。
京都議定書は先進国だけを対象としており、13年以降の枠組みに排出量が増えつつある途上国を取り込めるかどうかが課題になっている。日本は途上国の経済成長と温暖化ガス抑制を両立させる形で温暖化防止への取り組みを後押しし、新たな枠組みづくりでの主導権を握りたい考えだ。(後略)
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さて、これをたとえ話にしてみましょう。
あなたの父親はA社を経営しています。工場から出す排水も排気も驚くほどきれいで、ゴミはほとんど出さずリサイクル。長年の経験でそういった技術をコツコツと培い、ちょっとした特許も持っています。あなたと兄弟はそんなA社に誇りを持ちながら、技術者として父を助けています。
私はB社の経営者。やはり小さな会社をやっています。安かろう悪かろうの製品しか作れないので儲かりませんが、人件費を抑えてなんとかやってます。工場から廃液は垂れ流し、煙もバリバリ有害です。
さてある日、A社の社長(あなたのお父さん)がこんなことを言ってきました。
「お願いだから、あなたの会社も環境を汚さないでくれるかな。なんだったらホラ、1千万円あげるから、これで設備を整えなよ」
私は驚いて考えます。
「あれ? 苦情を言われるかと思ったらおかしなことになってきたぞ。ま、カネくれると言うのならもらっておくか」
私は1千万円をもらい、そのうち4百万円でA社から環境設備を買います。え、残りはどうするかって?そんなヤボなこと聞かないでくださいよ。
一方のあなたは、給料から「町内環境対策費」として年間2百万円を天引きされるようになりました。これまでがんばって環境をきれいにしてきたのに、B社のために所得を減らされたわけです。社長である父に不満をぶつけますが、「環境のため。町のためだ」と言われます。「他人を助けるために家族を犠牲にすんのかよ!」と言うと、「おまえには人を思いやる気持ちがないのか」と悲しい顔をされました。
これで無事に環境問題は解決しましたね。めでたしめでたし・・・って、そんなわけないでしょう! こんなおいしい話を1年で終わらせてたまるもんですか!
私はまず、工場の廃液を少しだけきれいにします。そしてもの悲しい顔で「もう少し援助があればいいんですけどねえ」とA社の社長に訴えます。心優しい社長は「じゃあ、きれいな環境を手に入れるまで、ずっと援助を続けますよ」と約束してくれました。
それからは少しだけ改善し、援助をもらい、また少しだけ改善し、援助をもらうの繰り返しです。危うく排水も煙もきれいになりかけたので、「焼却炉が」「土壌汚染が」「設備が古くなった」と新しい環境問題をどんどん作り上げて援助をやめさせないよう努力を続けます。
そのうちA社長は町内で孤立するのが怖くて、エエカッコしたがっていることに気づきました。「うちの会社も経営が厳しいから」とときどきゴネたりしますが、そんなときは彼の好きなキャバクラに連れて行きます。どうせA社からもらったカネで払うのですから痛くも痒くもありません。
一方のあなたはどうか?
環境を汚すB社の尻拭いをさせられ、自分の給料は減らされました。いくら稼いでも社長がB社に貢いでしまうので、A社の設備は古くなり、社員教育も遅れがちです。兄弟たちは「アホらしくてつきあってられっかよ」と家出してしまいました。たまたま父親(A社長)がB社長にキャバクラで接待されているのを目撃したときは、本気で絞め殺してやりたくなりました。
年月が経ったある日、父親であるA社長はあなたにこう言いました。
「会社は儲からないし、社員はどんどん辞めるし(お前のせいだろ!)・・・カネがなくなったから身売りすることに決めたよ。新しいオーナーを紹介する」
そこに颯爽と私が登場します。
「どもー、B社の社長どうえーす。これまでもらった援助金で特許も設備もみんな買わせていただきますた! これからも株主のためにがんばって働いてね!」
「ちょwww おやじアホかぁwwwwww !!! 援助金や特許はもともと俺たちが生み出したもんじゃねえかwwwwww! 勝手に渡すなあ!」
チャンチャン
(教訓1)
環境破壊に対して「やめてくださいよお」とカネを出すのは逆効果です。それはおいしい利権と化して、解決を遅らせる結果になるでしょう。それぞれの国が国内法でペナルティを課すほうが監視も効いて現実的だと思います。
(教訓2)
お人好しは経営者に向きません。がんばって働く人のモチベーションを下げ、会社を潰します。
国の経営も同じことです。
(教訓3)
地球のこと、人類のことを考えるのも良いですが、まずは身近な人を大切にしてください。
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