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2015年7月 6日 (月)

なでしこジャパンの強さを考える (2終)経験と危険察知能力

なでしこ対米国の女子サッカーW杯決勝は、2-5で完敗しました。

期待とは違っていましたが、いろんな意味で興味深い戦いだったと思います。
 
 
 
前半16分で4点取られて勝負は決したわけですが、米国は実に良く日本を研究していてその弱点を衝いて来ました。
 
実はなでしこは、高いボールの競り合いには強いのです。
 
その代わり、低くて速いボールや10m以上の競走には強くありません。
 
これまでの対戦相手は身長の違いを生かそうとして高いボールばかりを上げ、なでしこの術中に嵌りました(みんな知っていて黙っていたと思いますが、もう書いて良いと思います)。
 
しかし米国はそれに惑わされることなく、開始早々たたみかけてきたのです。
 
 
 
今回の戦いには、なでしこに勝つための戦略が凝縮されていました。
 
試合が長引けば長引くほど、なでしこの粘りと持久力が生きてきます。
 
逆に試合開始や後半開始の直後であれば、米国が圧倒する瞬発力の差が生きてきます。
 
だからまず試合開始直後にスピードで押しまくり、ラピノーが自由に蹴るチャンス(コーナーやフリーキック)を得ます。
 
 
 
特に1点目のコーナーは凄かったです。
 
「ラピノーからロイド」は、なでしこで言えば「宮間から澤」と同じ超ホットラインなので、警戒しないはずがありません。
 
しかしロイドはずっと離れた場所にいて、マークを外します。
 
そこから一気に走り込んできて、ピンポイントで低いコーナーキックに合わせました。
 
ご丁寧に他のチームメイトは高さを生かすふりをして日本のディフェンス陣を引き連れ、ラピノーからのパスコースとファーサイドへのシュートコースを空けています。
 
恐ろしくオーガナイズされたセットプレイでした。
 
 
 
おそらく何十回、何百回と練習したのでしょう。
 
前半15分を過ぎてしまえば、「なでしこワールド」にズルズルと引きずり込まれてしまいます。
 
この奇襲が成功するかどうかで、勝敗が逆になってしまうかもしれない正念場です。
 
そこで猛ダッシュで長い距離を走り込み、ピンポイントで決める大役を32歳のベテランが演じるのですから見事としか言いようがありません。
 
 
 
その仕掛けがわかってしまえば、実は対処は簡単です。
 
フォワードの選手をひとり前に置いて低いボールのコースを消してしまうか、そこを抜けたら誰かが狙ってカットすれば良いのです。
 
いずれにしても高さを警戒し過ぎて「空けてはいけないコースとスペース」を大きく空けてしまったのが敗因です。
 
 
 
もし澤選手がスタメンだったら1点取られた時点で見破り、対処法を指示したかもしれません。
 
しかしなでしこは大混乱に陥り、似たようなパターンで2点目を、そしてミスで3点目、4点目と立て続けに献上しました。
 
3失点まででしたら、まだ勝負はわかりませんでした。
 
 
 
米国は4点目を取った時点で、プラン通り日本にボールを持たせてカウンターとセットプレイ狙いに切り替えます。
 
日本が2点返したのは、時間帯から言ってお情けではなかったと思います。
 
だからこそ、浮足立って自滅したことが悔やまれるのです。
 
 
 
面白いことに、今回優勝した米国の平均年齢は参加国中最も高いです。
 
その次がなでしこ。
 
両者とも4年前よりスピードやスタミナは落ちているはずですが、それを経験と危険察知能力でカバーして決勝戦まで来たのです。
 
 
 
勝敗を分けたのは、
  1. 勝利への執念
     
  2. 敵を知り己を知る謙虚さ
     
  3. 戦略を実行するためのあくなき訓練。
 
米国はなでしこ個人個人の弱みまで研究し、良いところを全く出させませんでした。
 
それに対し、なでしこ側にはどこか心に隙がなかったか?
 
今回の敗戦を大きな財産にしてもらいたいところです。
 
 
 
おめでとう、アメリカ。
 
よくやった、なでしこ。
 
 
楽しませてくれてありがとう。
 
(終)
 

2015年7月 5日 (日)

なでしこジャパンの強さを考える (1)強運と努力

サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」がW杯決勝に進出しました。

女子サッカーはW杯・五輪・アルガルベぐらいしか見ないのですが、W杯・五輪で3大会連続の決勝進出は見事なものです。
 
そこでなでしこジャパンの強さについて考えてみたいと思います。第一回は「強運と努力」についてです。
 
 
 
なでしこを見ていて思うのは、「ツイてるな」ということです。
 
これは2011年のW杯初優勝から、多くの人が感じているでしょう。
 
相手の強力なシュートがバーやポストに当たって入りません。
 
このまえの準決勝イングランド戦では、至近距離からのヘッドをイングランドの味方がゴール前で方向を変えようとして枠外に出してしまいました。
 
そしてロスタイムに劇的なオウンゴール。
 
まさに「神懸かり」「霊的な守護神大活躍」「何かが憑依している」と表現したくなる強運ぶりです。
 
 
 
しかしそれらがすべて偶然だとは思いません。
 
たとえばイングランド戦の決勝点となったオウンゴールは、あの状況ならしばしばあることです。
 
これはサッカー経験者であれば賛同してくれると思います。
 
 
 
実は、キーパーとディフェンスの間に速いクロスを入れるのは必殺パターンのひとつです。
 
  1. 通常はそれに合わせて味方が走り込み、ちょこんと合わせてゴール
     
  2. あるいはファー(遠いサイド)まで到達させて大外から走り込んだ味方がゴール

    というパターンですが、それに加えて
     
  3. クリアしようとディフェンスが出した足に当たってゴール
という可能性も込みの攻撃なのです。
 
 
 
サッカー選手はあのパターンでオウンゴールしてしまった仲間を責めることはしません。敵が使いたいパスコースとスペースを消しながらクリアしようとすると、どんぴしゃのタイミングでゴールに蹴り込んでしまうことがあるからです。それは足が思うように動かなくなった終盤になるほど確率が高くなります。
 
同じことをサッカー男子日本代表が、奇しくも対イングランドの親善試合で田中マルクス闘莉王と中澤佑二の両選手でやっています。このときは日本が3得点(?)をしましたがそのうち2つはオウンゴールで、1-2で負けたという珍しいゲームです。
 
動画を見たい方は「イングランド戦 日本の3得点」あたりで検索してください。見事なダイビングヘッドとニアからの流し込みです。急所となる空間を埋めて思惑通りボールが来て、触ったからこそ生まれるオウンゴールなのです。
 
最も重要なスペースに走り込んでクリアしようとする。その意図と行動は正しいものです。いつもちゃんと仕事をしているから、オウンゴールの回数も多くなるのです。結果として失点することがあっても、長い間には必ずプラスになる守備なのです。
 
 
 
ですから今回のイングランド女子選手がヘマをしたとは思いません。
 
あれは川澄選手のクロスが、そういった可能性を含んだ攻撃だったからです。
 
ただ本人が泣きたくなる気持ちもわかります。
 
「ごくたまにあることだけど、なんでこんなときに出ちゃうのよ」
 
と思ったことでしょう。
 
 
 
私としては、あのゴールはオウンではなく川澄選手の得点にしたほうが良いと思います。
 
でないとまるで、あの選手が余計なこと・悪いことをしたかのように思う人がいるからです。
 
バックパスをゴールの枠に向けて蹴ってしまったり、キーパーが投げようとしてゴールに入ってしまったようなものはオウンゴールとして構いません。
 
しかしこちらが出したボールが相手に当たって入った場合は、蹴った人の得点と認めたほうがみんなハッピーではないでしょうか。
 
 
 
 
 
話を「強運と努力」に戻します。
 
2011年にW杯で優勝した時は「神懸かりだな」と思っていました。
 
しかしその後の試合を見るにつれ、「これは努力が運を引き寄せてるんだな」と思うようになりました。
 
 
 
なでしこは、とにかく勝つことしか考えていません。
 
負けるとサッカーができなくなる、女子サッカーが消えてしまうという危機感で浮かれたところがありません。
 
「今回は組み合わせが良かった」という人もいますが、仮に厳しい組み合わせでも2012年五輪のように2位抜けで有利なところに移ったでしょう。
 
 
 
そしてグループリーグでは全員を出場させ、休ませながら調子を見ます。モチベーションと一体感も高まります。
 
さほど強くない相手でも点を取り過ぎることもなく、消耗を防ぎながら着実に勝ち点を稼ぎます。
 
 
 
そして試合中はだれもサボりません。
 
女子の場合は抜いたりパスが通ってからシュートまで時間があることが多いので、一生懸命に戻れば何とかなったりするものです。
 
同点やビハインドで時間が過ぎても、焦ったりやけになることはありません。
 
じっくりとチャンスを待っているうちに相手が自滅したりするのです。
 
 
 
これはまるで、サッカー強豪国の考え方・戦い方です。
 
身体能力で後れをとっていても、戦略とメンタルではすでに強豪の域に達していると言えるでしょう。
 
強運であるように見えても、それはあらゆる努力の末に引き寄せたものであるということです。
 
ということで私はアメリカとの決勝戦を五分五分と見ています。
 
(続く)
 

2014年6月28日 (土)

サッカーワールドカップ2014 (3)敗北の構造

今回の日本代表の自滅ぶりをみて、きっと対米戦争もこんな感じで負けたのだろうなと思います。

「ちゃんと準備すれば勝てた」と言っているのではありません。一部の選手や関係者に引きずられ、納得も団結もしないまま戦いに挑み、敗れるべくして敗れたのではないかという意味です。
 
 
 
旧日本軍には、正式な上司以外にも権力を持つ人々がいたそうです。たとえば表向きの階級は低くとも新兵たちに睨みをきかせる古参兵がいて、非公式な権力をふるっていたと聞きます。新任の将校はそういった人々に逆らうと仕事が進まないし、トラブルを起こすと出世に響くので専横を黙認していたこともあるようです。
 
あるいは参謀などの地位にいる人が大将などの名前を騙って命令を出し、勝手に軍を動かしていたというケースもあります。それで失敗しても責任を取るどころか、さらに上の階級に出世しちゃったりしています。業績や能力によって評価するシステムが、そもそも日本にはないのです。
 
そういったことはどんな国でも起こり得ますし、たまたま日本が負けたのでそういった話を良く耳にするだけなのかもしれません。しかし指揮系統を守らなかったり、チームの勝利より自分の利害を優先する人々が少ない国の方が、戦争に勝つ可能性は高いと思います。
 
 
 
そのような組織では、現場の人々は大変です。
 
上の人間は勝つためのアイディアを出したりサポートするわけではなく、「とにかく勝て。負けは許さない」とだけ命令します。
 
指揮系統や軍規を守らない兵士がいても、それが「聖域」だったりすれば上司は注意しません。露骨なえこひいきでそれ以外の人はやる気を失います。
 
現場の人間が飢えや敵と戦っているとき、上司たちが芸者をあげて宴会をしていたら、誰だって「やってられない」と思うでしょう。
 
「俺たちは世界一になれる!アメリカを倒すんだ!」と夢想する兵士に対し、「馬鹿言うな。頭を冷やせ」とは言えません。むしろ大言壮語したほうが上司に気に入られ、出世が早かったりします。
 
それに対しマスメディアは「日本兵の練度は世界一。アメリカなど恐れるに足らず」と煽ります。
 
旧日本軍がずるずる対米戦争に向かった光景と、今回のサッカー日本代表の敗戦はよく似ているように思えるのです。
 
 
 
そして負けたときの反省もきわめて情緒的で、原因の究明を避けているかのようです。これも日本の「伝統芸」なのかもしれません。
 
「雨で得意のパスサッカーが機能しなかった」
→1・2戦で雨が降る可能性が高いことはわかっていたはずですが
 
「自分たちのサッカーができなかった」
→相手はそれを封じてきますって
 
「エースのXXを出して負けたのだから仕方がない」
→その選手が戦略の一部として機能しているかどうかを問題にしてください
 
「過ぎたことをいまさら悔やんでもしかたがない」
→いや、反省して次に生かしましょうよ
 
「戦犯はXXだ!」
→今回は個人の問題より「代表ビジネス」というシステムの問題がはるかに大きいと思いますね
 
「感動をありがとう」
→そんなものいらないから勝つ方法を考えていこうぜ
 
 
 
きわめて情緒的でふわふわとした日本代表に対し、私が気に入っているのはアメリカ代表です。
 
アメリカ代表のサッカーはきわめて合理的で、敵のいやがることを機械のようにしつこく繰り返してきます。
 
選手一人一人が兵士のように約束事を守りながら自分のタスクをこなし、時間いっぱいまで精力的に戦います。
 
ずっと見ていて飽きることがなく、その多くに劇的な結末が待っています。
 
勤勉・合理的・そして結果的にスペクタクル。それがアメリカ代表のサッカーです。
 
なぜ多くの分野でアメリカが世界一なのか、よくわかります。
 
 
 
さて、我らが日本代表はどうするのでしょう?
 
ショーとしての側面に磨きをかけ、「負けても儲かる」ビジネスに育てるのでしょうか。
 
それとも本気で優勝を目指し、勝ち残る方法を追究して行くのでしょうか。
 
情緒的な言葉に惑わされることなく、障害を取り除くことができるでしょうか。
 
これは今の日本において多くの分野であてはまることだと思います。
 
(終)
 
 

2014年6月26日 (木)

サッカーワールドカップ2014 (2)勝負なのかショーなのか

結局、日本代表は2敗1引き分けでグループリーグ最下位でした。

第二戦のギリシャに1点でも入れて勝っていれば決勝トーナメント進出となっただけに、コンディショニング失敗と自爆采配が悔やまれます。

  • 「日本には空中戦の文化はない」とヘッドの強い攻撃手を連れて行かなかったのに、ぶっつけ本番でセンターバックの吉田にそれをやらせるのはどういうことか。
     
  • ひとり退場して引き分け狙いに切り替えたギリシャに対し、サイドからハイクロスを上げて楽にさせたのはなぜか。
     
  • 機能していない選手を残し、効いていた選手を下げるのはなぜか。
     
  • 自分で得点したいからか、持ち場を離れて真ん中に入る選手をなぜ修正できないのか。

個々の選手やプレイがどうのより、「勝つためにチームとしてちゃんと考えたのか?」「そもそも本当に勝つ気があったのか?」 という点に対して大きな疑問が残りました。

 

私もずっと日本代表をフォローしているわけではないので後講釈になってしまうのですが、今回のキャンプ地をイトゥにしたことを最初から疑問に思っていた人々が少なからずいたようです。特に現地新聞の指摘は傾聴すべきものでした。

レシフェまでイトゥーから直線距離で2151キロ、ナタールまで2338キロ。東京から台湾まで2247キロだから、これでは冷え込みが厳しくなる晩秋の東京(11月初旬頃か)から亜熱帯の台湾へ毎回、試合に出かけるのと変わらない。選手は、試合どころかカゼで寝込むのが関の山である。
ニッケイ新聞 2014年1月11日

一説によるとこれは大きなスポンサーの現地法人があって、対戦場所や相手が決まる前にキャンプ地として決定したとのこと。

プロ化前のアマチュア時代から日本のサッカーを支援してきた大スポンサーが、チームの不利になることを望むとは思えません。しかしひょっとすると誰かが、スポンサーに「良い顔」をしたくて決めてしまった可能性はあります。

実のところ、涼しいところでのキャンプが一概に悪いとは言えません。高温多湿の環境で体力を消耗するより、涼しいところで過ごした方が良いこともあります。しかし第一戦で日本代表の動きが驚くほど早く止まってしまったことを考えると、コンディショニングに失敗した可能性は大いにあります。今後の教訓としたいところです。
 
 
 
今回の敗戦の裏側には、「勝負ではなくショーになってしまった」ことがあると思っています。
 
勝負なのかショーなのか
 
言い方を変えると
 
競技なのか興行なのか
 
ということです。
 
プロスポーツである以上、勝負であると同時にショーであることは間違いありません。サッカーの普及と選手育成のために、カネがかかることも理解できます。たとえば女子サッカーはそれ自体では採算が取れず、男子サッカーからの売り上げを回しています。だから代表戦を企画したり、それを盛り上げることは当然の努力なのです。
 
しかしショーとして成功したところで満足したり、それを目的とするようになっては、そのスポーツの未来は暗いと言わざるを得ません。
 
自分が「所有」している選手をスターシステムに乗せるのもいいでしょう。しかしそのために代表選考や起用法に口を出し、奇妙な選手交代の原因になっていたとしたら本末転倒です。4年前に活躍した選手が今も活躍できるケースは稀なので、すでにブランドが確立した選手を聖域化して勝負に挑むのは危険なのです。
 
 
 
自分の市場価値を高めるためだけにプレーする選手が出てきたとき、スポーツであれば監督がそれを抑えてチームとしての力になるようコントロールします。しかしショーであればその「花形」に監督も選手も口を出せなくなり、聖域と化してしまいます。
 
すると花形選手に迎合して、自分のステップアップのために代表を利用する選手たちも出てきます。チームは派閥に分かれ、いがみ合うようになります。監督はないがしろにされ、チーム戦術はガタガタ。しわ寄せを食らう選手は「やってられっかよ!」と怒り出すでしょう。
 
今回の結果は「ショービジネスの側面が肥大化し、勝負に専念できなくなって自滅した」と考えると納得できる話が多いのです。
 
 
 
ワールドカップは国別対抗であるため愛国心が刺激され、興行的に成功しやすい下地があります。その特需に乗って儲けたい気持ちもわかります。
 
しかし勝つ気がないショーを見せられて「感動をありがとう!」「4年後に向けて頑張ろう!」と言われても、なんのこっちゃとしか思いません。スポーツは困難な状況を打開するから面白いのであって、そのつもりがない人々を見ても時間の無駄と考える人もいます。ショーはショーとしての面白さがあると思いますが、そうであれば勝ち負けや戦略にこだわる必要はありません。
 
 
 
監督や個々の選手の責任を問うことも大事ですが、それよりも前にサッカー日本代表は「勝負なのかショーなのか」「競技なのか興行なのか」をはっきりしておくべきでしょう。
 
もしショーなのであれば、選手はコンディションを崩してまで花試合に参加する理由はありません。ガチンコ勝負のクラブに専念したい選手もいるはずです。ワールドカップは野球のWBCのようになり、有力選手の辞退が相次ぐかもしれません。その方向性は協会などが決め、選手や観客はそれに対応するだけです。
 
少なくとも言えるのは真剣勝負を望んでいる選手やファンに対し、スポーツの皮をかぶった感動ショーに無理矢理つきあわせるのは逆効果ということです。期待が高かった分、落胆も大きなものになるでしょう。
 
単に刺激や興奮が欲しい人はそれで良いかもしれませんが、発展や進化を望む人々はどんどん離れて行くと思います。
 
(続く)

2014年6月18日 (水)

サッカーワールドカップ2014 (1) 雨の日は「上手い奴」より「強い奴」

サッカーWC2014の「日本 vs コートジボワール」について考えたことを書きます。

 
結果は残念ながら、1対2で負けてしまいました。しかし内容や実力差から言って、よく1点差で済んだと思います。あれだけ選手がミスをして監督も混乱して2点しか取られなかったのであれば、むしろラッキーだったと言えるでしょう。
 
会場となったレシフェは雨。気温26℃、湿度77%以上。
 
日本が得意とするパスサッカーは雨と疲労で全く機能せず、前半に日本が先制した後は一方的に攻められる展開でした。コートジボワールは4-5点入れてもおかしくなかったと思います。
 
 
 
経験者ならわかると思いますが、雨の日のサッカーは「上手い奴」より「強い奴」のほうが有利です。
 
ぬかるんだ足元でボールは転がらず、足技は封印され、華麗なパスワークも分断されます。アマチュアレベルだとわざと水たまりにボールを蹴り込んで、そこに突進する戦略が有効だったりします。
 
 
 
そこで大活躍するのは、体の強い選手です。
 
足元がおぼつかない中で相手を追いかけ回し、体をぶつけてボールを奪い、重戦車のようにゴールに突進します。
 
その力の前に軽量級のテクニシャンはなすすべがありません。F1最速マシンも、ぬかるんだ田んぼの中では力を発揮できないのです。
 
一般的にアフリカ人は体が強く、基礎技術もしっかりしています。前回の南アフリカWCで日本を9位に押し上げた立役者のひとりである松井大輔選手は、「芝生が濡れてたら最悪だね。一番向こうの長所が出るから。」と指摘していたとのこと。さすがです。
 
 
 
 
日本でいえば、中田英寿選手が「強い」タイプでした。特に雨の日は体の強さと基礎技術の高さがいっそう際立ち、いくつもの名シーンを残しました。
 
この試合で本田圭介選手が先制ゴールを入れたのも同じ理由です。本田選手は正直、今の日本のパスサッカーに完全にフィットしているとは言えません。しかし雨でみんなの体が動かないとき、その強靭な体力がものを言います。
 
だから雨の日は華麗なテクニシャンではなく、体力があって気持ちが強い選手を選ぶべきなのです。
 
 
 
1点リードして前半を終えたとき、日本が得意とするパスサッカーが機能していないことは明らかでした。特に左サイドの香川選手のところがつけこみやすくなっており、何らかの対処が必要でした。
 
香川選手を先発させたことは悪くないと思います。しかしパスサッカーができないとわかったなら、まず大久保選手と交代することを考えます。大久保選手はみんな死にそうな環境で馬車馬のように働く体力と気力を持っているからです。高温多湿の泥仕合には、まさにうってつけの選手と言えるでしょう。
 
その働きは4年前の南アフリカWCで証明されています。守備に攻撃に潰れるまで走りました。当時はシュートこそ入る予感はしませんでしたが(失礼)、今回は守備だけでなくゴールも期待できると思っていました。
 
 
 
しかしザッケローニ監督が選択したのは、長谷部に代えて遠藤。
 
これには目が点になった人も多いと思います。
 
守備が崩壊しそうなときに、体と気持ちが強く(つまり雨の泥仕合に強く)、縦への推進力を生み出す長谷部を下げるのは大黒柱を切り倒すようなものです。もし代えるとしたら、少なくとも長谷部以上に守備を「整えられる」選手でなくてはいけません。
 
今の遠藤選手に守備力を期待してはいけません。ボールをキープできないので遠藤選手を入れようと思ったのかもしれませんが、遠藤を入れる時は純粋に攻撃の駒として使うべきです。守備までさせたら相手の攻撃は強まり、日本の攻撃は弱くなってしまうからです。
 
遠藤を入れるのであればトップ下に入れるべきでした。そして本田をワントップに上げて大迫を左サイドに回し、香川を下げるべきだったと思います。さらに言えば左サイドは大迫より大久保が適任だったと思います。いずれにしても香川を残して遠藤に守備をさせ、相手の攻撃を助ける理由は全くなかったと思います。
 
 
 
そして案の定、日本の左サイドは崩壊しました。
 
2点で済んで本当にラッキーだったと思います。
 
 
 
しかし思うのですが、ザッケローニ監督は雨の試合を想定していなかったのでしょうか。
 
彼が雨の日は「上手い奴」より「強い奴」というセオリーを知らなかったとは思えません。
 
そして対戦場所と対戦相手が決まったならば、相手の駒や気象条件を考えて戦略を練るはずです。
 
 
 
ザッケローニ監督がブラジルに連れて行く日本代表23人は、パスサッカーに特化した選手たちでした。
 
メンバーが発表されたときは、私も「すいぶん戦略を限定したなあ」としか思いませんでした。
 
しかし今の時期のレシフェにこれほど雨が多いと知っていれば、細貝や豊田を連れて行かなかったことに強い疑問を抱いたでしょう。東京の9月の降水量が200ミリぐらいですから、その倍ほど雨が降る季節であることを考慮しなければならなかったはずです。
 
次にギリシャと戦うナタルも、この季節はそれなりに雨が多いようです(こちらは降水量の単位がcmになっていたので、一瞬雨が少ないと錯覚しました)。その次にコロンビアと戦うクイアバは、湿度こそ高いものの雨の確率は高くありません。
 
少なくともグループリーグで戦う3試合は現地の気候と対戦相手を考慮して、戦い方のプランをいくつか用意しておくのは当然です。それなのに今回の日本代表は華麗なテクニシャンが多すぎて、泥仕合を制する気力・体力を持った選手が不足しています。まるで「大雨でパスが通らない」ケースが全く想定されていなかったように思えるのです。
 
 
 
 
ザッケローニ監督はイタリア人ですが、とても日本人的なミスをしているような気がします。
 
それは「自分がベストを尽くせば、相手は自動的に負けてくれる」と思い込んでいることです。
 
実際にはそんな都合の良い話はありません。相手や気象条件によって戦うメンバーや戦略は変わり、戦略の効果や相手の対策によって選手を交代させて修正しなくてはなりません。
 
しかし今回の日本代表は、すでにメンバー選出の段階で戦略を狭めてしまっているのです。
 
 
 
パスサッカーにこだわるあまり、泥仕合に強い選手を起用(選出)しない。
 
「自分たちのサッカー」にとらわれすぎて、うまく行かないとパニックに陥ってしまう。
 
まるで旧日本軍が「得意技」「伝統芸」にこだわるあまり、負け続けた状況に似ています。
 
 
(続く)
 

2012年8月 1日 (水)

なでしこの「引き分け狙い」批判に反論する

2012年ロンドンオリンピック女子サッカーで、日本のなでしこが南アフリカ相手に0-0で引き分けグループ2位で予選を通過しました。

佐々木則夫監督は後半途中から引き分け狙いに切り替えて選手に指示を送ったそうです。

しかしこれに対し、なぜか批判する人がいます。いわく

  1. 期待して見ていた少年少女を落胆させた
  2. 相手に失礼である
  3. 選手のモチベーションに悪影響

などです。

 

 

おまえはいったい、何を言っているんだ?

 

私は「3位に落ちるリスクを最小限に抑えながら、いかにエレガントに2位になるか」ということに注目しながらゲームを見ていました。

試合日程・場所・相手との相性を見る限り、グループ2位が断然有利です。1位だと移動がキツイし、3位に落ちて米国が相手になったりしたらイヤすぎる(笑)。

金メダルのためには2位抜けを狙うべきで、 なでしこにはそうするだけの実力と勝ち点がありました。 文句が言いたいなら2位抜けを有利に設定した運営側に言うべきでしょう。

 

仮に最初から日本の調子が良くて得点できたのなら、それを止めてしまうと悪影響があります。 後から不自然に失点するわけにもいきません。 最初から引き分け狙いをあからさまにするのも興醒めですからね。しかし得点できずにいるうちに、引き分け狙いの環境がどんどん整ってきました。

そしてスウェーデンは終了間際に同点に追いつかれてます。おそらくあちらさんも同じことを考えていて、リードできたことを幸いに最後にちょいと罠を仕掛けてみたのでしょう。

あぶねー。うっかり先制してたらダチョウ倶楽部方式で1位にされるところだったぜ (笑) 。

 

日本  「俺、グループ1位は絶対イヤだからな!」

スウェ 「じゃあ、俺が1位になるよ」

カナダ 「いや、ここは俺が」

日本  「・・・じゃあ俺がなるよ」

ス・カ  「どうぞどうぞ」

 

佐々木監督が途中から「引き分け狙い」を指示したのはきわめて合理的です。

常に全力でアピールの機会を狙っている選手たちに対し、「先制点を入れるな」と明確な戦略を提示しました。これこそ監督稼業の真骨頂です。

しかもサブメンバーに五輪出場の経験をさせつつ、調整させることができました。中二日の鬼畜日程の中でベテラン選手も休憩を取れました。五輪前にちょっと調子が悪くそこから復調していることまで考えると、金メダル獲得に向けてベストの予選結果を得たと判断します。

 

 

翻って、それを批判している人はなんなんでしょうか?

 

 

  1. 期待して見ていた少年少女を落胆させた
     
    →否。「これぞグループリーグの戦い方!」と言うお手本です。目先の勝ち点より金メダルのほうが重要であることを忘れてはなりません。その戦略的思考を少年少女に教え込むべき。
     
  2. 相手に失礼である
     
    →否。 最終戦で戦っている相手は目の前の南アフリカだけではありません。ライバルのスウェーデンも同じ事を考えて罠を仕掛けてきています。
     
  3. 選手のモチベーションに悪影響 

    →否。 選手個々の欲望・野心をコントロールしてチーム全体の利益につなげるのが監督の役目です。

 

 

「いつでも全力主義者」は頭を使わずに楽ができます。

失敗したら「全力を出さなかった」選手や部下の責任にできるからです。

選手や部下は使い潰しの消耗品であり、自力でベストコンディションを保ち、良い結果を自分に「上納」しなければならない考えています。

 

彼らはまるで旧日本軍の「名参謀」のようです。

いつも精神論を振りかざし、チームを疲弊させ、無駄死にを強要します。

戦線を野放図に拡大して、休憩も補給もさせません。

集中砲火を浴びるだけの場所を「死守せよ」と無責任に命令し、支援もせず知らんぷりです。

 

役割分担や責任は丸投げ。

戦略やプロセスは無視。

「勝つことでしか穴埋めできない」「死ぬことでしか贖えない」と、結果を出すことを強要します。

結果オーライですべて許されるなら、そこに学びはありません。結果しか見ていないから、いつも表面だけを見てお気楽に批判ばかりしているのです。

 

ちょっと思い出してください。

あなたの部署は、鬱や自殺が多くないですか?

部下たちに「際限のない無駄な努力」や「仕事するふり」をさせていませんか?

上司は「怒鳴り散らすことが仕事」だと思っていませんか?

「業績が上がらないのは現場の努力不足」なんて言っちゃってませんか?

経営陣のリーダーシップや会社のシステム自体に問題はないのでしょうか?

 

テレビのワイドショーが「勝ちに行け!」「日本の勝利が見たい!」と煽るのはわかります。彼らはスポンサーのために試合を盛り上げなければならず、視聴率が所得に直結するからです。

しかし日本代表に優勝という結果をもたらし、サッカー大国への道を歩みたいのであれば、彼らとは利害が一致しないときがあることを我々は理解すべきです。

  1. 引き分けを狙え
  2. 疲れが溜まった選手を休ませろ
  3. 目先の勝ちにこだわるな
  4. 体調は決勝トーナメントに入ってからピークになるように持って行け

これらの話が当たり前にされるようになったとき、日本サッカーはもっと強くなることでしょう。男子ワールドカップ優勝も夢物語ではないと考えています。

 

日本のサッカー選手と育成システムは世界に追いつきつつあります。

指導者や審判はもう少し時間が必要です。

それに対しスポーツジャーナリズムは、 何周も何周も遅れてしまっています。 

 

しかし同時に厚みのある豊かな「サッカー文化」が、草の根的に広がりつつあることも強く感じています。

今回のケースはちょっと挑発的に書きましたが、異論・反論を歓迎します。これについて議論が深まることは日本のスポーツ全体にとって有益なことです。

 

チーム全体を楽にする佐々木監督の判断は、最後の最後に効いてくることでしょう。 

人事を尽くして天命を待て。

がんばれ、なでしこ!

 

2007年7月29日 (日)

アジアカップが楽しみでしょうがない(3)

もはや、楽しくありません・・・。

韓国を見て「こいつら進歩しねえな」と思っていたのですが、日本はそれ以上に退化しておりました。「ジーコジャパンのほうが良かった」と思えるって、どういうことだ?

日本チームの航空券が確保されておらず移動に丸二日かかっただとか、宿が手配されずに雑魚寝したとか、水がないのでスタッフが買いに言ったとか、そりゃあいろいろ逆風はあったでしょうよ。しかしそれでも、ひとり少ないチームを相手にあいも変わらず点が取れないことは問題だと思います。

 

ジーコが名監督だったとは思いませんが、少なくともこの試合の日本代表よりはチームとして機能していたような気がします。

  1. (オシム)中村俊輔を中央で使い、サイドは加地と駒野。これだと精度の高いサイドへのパスは出るが、そこから精度の高い中央へのクロスは入らない。自力で突破できなければ、またボールを中に戻すだけ(相手はそこを狙って逆襲する)。俊輔は右サイドのほうが良いのでは?(ジーコ)サントスの左サイドの守備はいまいちでも、突破力とクロスの精度があるので相手は対応に追われていた。
  2. (オシム)ボランチに鈴木啓太。危険なゾーンを鋭い嗅覚でよくカバーしてくれるが、ロングパスやミドルシュートという意味では期待薄。ジーコ時代の稲本と福西が恋しく思える。
  3. (ジーコ)中田や小野は使いづらい選手かもしれないが、こういう試合で何とかしてくれる気持ちと実力があった。(オシム)今のチームにはそういった選手が見当たらない。

相手が少なくなってもワントップを続けるオシムの采配も疑問でしたけどね。まあ今回は采配もさることながら、選手選びの段階ですでに手詰まりになっていたような気がします。

もう少しオシムが構想するサッカーを見せてもらいたいのですが、どうなることやら。逆に「こんなチームじゃやってらんねえ」と辞めてしまうかもしれませんけどね。

ストレスが溜まる試合でした。

2007年7月25日 (水)

アジアカップが楽しみでしょうがない

久々のサッカー談義です。

日本代表が3連覇を目指すアジアカップは、準々決勝で強敵のオーストラリアをPKで下しベスト4に残りました。ワールドカップでは世界との差をわかっていながら応援しなければならないわけですが、アジアカップの場合はキッチリ仕事をすれば優勝できるので見ていて楽しいですよね。

 

オーストラリア戦はオシムジャパンのひとつの特徴を、厳しいコンディションの中でフルに発揮した試合だったと思います。

もともと相手は中2日と日本よりも休養が少なく、移動があって、なおかつ白人は高温多湿に弱いので、そういったアドバンテージがあってようやく互角の勝負だと思っていました。しかしフタを空けてみたら、「引いた相手に対する得点力」だとか「セットプレイへの対処」という課題は残したものの、思ったより早くオーストラリアの体力を奪って安全な戦いができたと思います。

今の日本代表を見ていると横バスやバックパスばっかりでつまらないかもしれないですが、高温多湿の中であのポゼッションサッカー(なるべくボールをキープしてチャンスを狙う戦法)をやられたら相手はきついですよ。サイドチェンジされたら全員でマークを修正しなければならないし、中村俊輔・中村憲剛・遠藤あたりがボールを持ったら決定的なパスを出されるから3人ぐらいで囲まなくてはならない。そこをスルリを横パスで逃げられたら、相手は3人分の体力が奪われるわけです。

で、日本の中盤3人の足が止まるころには、相手はほぼ全員の足が止まっているという(笑)。後半になると日本も消耗していましたが、オーストラリアはそれ以上でした。足が動かなくなれば踏ん張りが利かなくなってどうしても反則が増え、オーストラリアの荒っぽさが増幅されることになります。退場でひとり減ってしまったら、あとはフリーキック狙いの転倒だとか、PKまでの時間稼ぎしかありません。そういう意味では、オーストラリアもそれなりに良く戦ったと思います。

この戦法がどこでも通用するとは思いませんが、過酷な条件下であればアリでしょう。少なくとも私が他のチームに所属していたら、「日本のサッカーはいやらしいなあ。当たりたくねえよ」と感じるのではないでしょうか。だって、ひと月ぐらい体力が戻りそうにないんだもん(笑)。

PKで勝ったのは川口に負うところが大きかったかもしれませんが、試合そのものは全員がよく自分の役割を理解してチームとして機能していたと思います。ヒヤヒヤしながらも勝ち残るのは、「アジア限定ながら実力のある強豪」ということなんでしょうね。

 

結局、ベスト4は以下のようになりました。

日本 ---
             |---
サウジ -     |
                  |---
韓国 ---   |
             |-- |
イラク --

準決勝のサウジは難敵ですが、日本はまた移動なしで一日休みが多いですからこれまでどおりやれば6-7割の確率で勝てると思います。なるべく早く体力を奪って、カウンターとセットプレイを押さえ込むと。サウジはまだ若くて元気一杯ですが、同時に不必要なプレイをする時がありますからつけ込むスキは充分にあります。

反対側のブロックはイラクが強いでしょうね。決勝で当たれば日本と五分五分・・・もしかしたらやや上かもしれません。

韓国はイラン戦を見る限り古いアジアンサッカーでグダグダですけど、首の皮一枚で生き残ってきた相手はあなどれません。もし日本と当たればこれまで以上の力を出して善戦すると思います。しかしそれでも普通にやれば6-7割の確率で日本が勝つでしょう(審判次第という面はありますが)。

 

油断は禁物ですが、かなり期待していいと思います。

  目指せ3連覇、がんばれ日本!

今晩 22:20からいよいよ準決勝。

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